2020/6/1、中年から高齢者における少量から中等量のアルコール摂取と認知機能の関係を調べたアメリカの研究「Association of Low to Moderate Alcohol Drinking With Cognitive Functions From Middle to Older Age Among US Adults」の結果をまとめました。

2020/6/1、中年から高齢者における少量から中等量のアルコール摂取と認知機能の関係を調べたアメリカの研究「Association of Low to Moderate Alcohol Drinking With Cognitive Functions From Middle to Older Age Among US Adults」の結果をまとめました。少量から中等量の飲酒と認知機能との関連について様々な報告があります。アメリカにて、少量から中等量のアルコール摂取と、中年期から高齢期の間の認知機能の変化、認知機能の変化率との関係を調べるために、アメリカの成人を代表とした「HPS」(Health and Retirement Study)の参加者、前向きコホート研究を実施、平均9.1年間追跡しました。全体で19887例、HPS開始の1996年から2008年に掛けて、少なくとも3回の隔年の調査にて認知機能測定を実施しました。2019年までデータ解析を行いました。アルコール少量と年齢、精神状態の認知機能の軌跡と年間変化率、言語想起、語彙力、精神状態、言語想起スコアの合計による総合認知スコアを調べました。参加者は2つの認知機能の軌跡を、開始時、少なくとも3回の隔年調査の認知機能測定によって評価、一貫して低値の軌跡(調査期間を通じて低い認知機能スコア)、一貫して高値の軌跡(調査期間を通じて高い認知機能スコア)の集団がありました。結果、19887例、平均年齢61.8歳、女性11943例(60.1%)、白人16950例(85.2%)でした。少量から中等量の飲酒(女性は週8杯未満、男性は週15杯未満と定義)は、一貫して高い認知機能の軌跡、認知機能低下の低い率と有意に関連していました。飲酒を全くしない人(never drinkers)と比較して、少量から中等量の飲酒は、総合認知能力の低い軌跡(odds ratio [OR], 0.66; 95% CI, 0.59-0.74)、精神状態(OR, 0.71; 95% CI, 0.63-0.81)、言語想起(OR, 0.74; 95% CI, 0.69-0.80)、語彙力(OR, 0.64; 95% CI, 0.56-0.74)と、有意な関連 (all P < .001)を認めました。さらに、少量から中等量の飲酒は、総合認知能力低下の年間低下率の減少(β coefficient, 0.04; 95% CI, 0.02-0.07; P = .002)、精神状態(β coefficient, 0.02; 95% CI, 0.01-0.03; P = .002)、言語想起(β coefficient, 0.02; 95% CI, 0.01-0.04; P = .01)、語彙力(β coefficient, 0.01; 95% CI, 0.00-0.03; P = .08)と関連を認めました。精神状態の軌跡において人種差は有意(P = .02 for interaction)で、白人において少量から中等量の飲酒と一貫して低値と関連(OR, 0.65; 95% CI, 0.56-0.75)していましたが、黒人においては関連(OR, 1.02; 95% CI, 0.74-1.39)を認めませんでした。最後に、アルコール消費量と認知機能との関係は「U字」関係を認め、適量は週10から14杯と考えられました。少量から中等量のアルコール飲酒は全般的な認知機能スコアの改善と関連しており、特に白人において強く関連を認めました。中年期から高齢期の間のアルコール飲酒と認知機能との関連のメカニズムを説明する研究が必要とされていますと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32597992
適量飲酒と認知機能との関連です。アメリカにおいては、週10杯から14杯のアルコール摂取は認知機能低下に対して有益ではないかという報告です。アルコールは脳に有害という報告もあり、大規模な前向きコホート研究が必要です。2017年のオックスフォードの試験では有害であるとまとめています。
「Moderate Alcohol Consumption as Risk Factor for Adverse Brain Outcomes and Cognitive Decline: Longitudinal Cohort Study」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28588063


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