2020/7/11、駆出率の低下した心不全における包括的疾病修飾的薬物治療の推算障害便益を調べた研究「Estimating lifetime benefits of comprehensive disease-modifying pharmacological therapies in patients with heart failure with reduced ejection fraction: a comparative analysis of three randomised controlled trials」の結果をまとめました。

2020/7/11、駆出率の低下した心不全における包括的疾病修飾的薬物治療の推算障害便益を調べた研究「Estimating lifetime benefits of comprehensive disease-modifying pharmacological therapies in patients with heart failure with reduced ejection fraction: a comparative analysis of three randomised controlled trials」の結果をまとめました。3つの薬剤クラス、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonists: MRAs)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(angiotensin receptor-neprilysin inhibitors: ARNIs)、SGLT2阻害薬(sodium/glucose cotransporter 2 inhibitors)は、ACE阻害薬(angiotensin-converting enzyme inhibitors)、ARB(angiotensin receptor blockers: ARB)、β遮断薬による従来の薬物療法に上乗せすることで、駆出率の低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction: HFrEF)の死亡率を低下させることがわかっています。過去の研究では治療背景が異なることからどのクラスの薬剤が効果的であるのか、どの組み合わせが治療便益が期待出来るのか十分にわかっていませんでした。3つの過去の無作為化対照試験のデータから、慢性の駆出率の低下した心不全において、従来の治療と包括的な治療と、事象フリー生存率、生存率の障害便益を算出しました。「EMPHASIS-HF」試験(n=2737)、「PARADIGM-HF」試験(n=8399)、「DAPA-HF」試験(n=4744)、3つの試験の横断解析によって、従来治療(ACR阻害薬、ARB、β遮断薬)と、包括的治療疾患修飾的薬物治療(ARNI、β遮断薬、MRA,SGLT2阻害薬)で、治療効果を比較しました。主要転帰は心血管死、心不全初回入院の複合、個別転帰は全死亡としました。ACE阻害薬、ARB、β遮断薬を使用した「EMPHASIS-HF」試験において、包括的疾病修飾的薬物治療の事象フリー生存率、生存率における長期便益の増加の治療効果は生涯一貫していました。結果、従来治療と比べて包括的疾病修飾的薬物治療は、心血管死、心不全入院の主要転帰におけるハザード比は0.38(95% CI 0·30-0·47)でした。ハザード比は心血管死(HR 0·50 [95% CI 0·37-0·67])、心不全入院(0·32 [0·24-0·43])、全死亡(0·53 [0·40-0·70])、個別でも良好な治療効果を認めました。包括的疾病修飾的薬物治療による治療は、従来治療と比べて推算で、80歳において2.7年、55歳において8.3年、心血管死、心不全初回入院の延長、80歳において1.4年、55歳において6.3年、生存の延長相当しました。駆出率の低下した心不全において、早期の包括的疾病修飾的薬物治療の治療効果は有用で、ARNI、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬の組み合わせは新しい標準治療として支持されると論文ではまとめています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32446323/
心不全に対して、β遮断薬、ACE阻害薬、ARBに加えて、ミネラルコルチコイド拮抗薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬、SGLT2阻害薬の3つの上乗せは効果的で、62%心血管死、心不全初回入院を減らしたという報告です。心不全の治療も日進月歩で進歩しますが、依然として根本治療はありません。心不全にならないこと、予防が一番ということは変わらずです。


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