2020/7/16、急性腎障害において腎代替療法を開始するタイミングについての研究「Timing of Initiation of Renal-Replacement Therapy in Acute Kidney Injury: STARRT-AKI」の結果をまとめました。急性腎障害(Acute kidney injury: AKI)は集中治療室においては頻度が高く、多くは腎代替療法(renal-replacement therapy: RRT)を受けます。しかしながら、腎代替療法の最も効果的な導入のタイミングは十分にわかっていません。集中治療室で重症の急性腎障害に対して多施設無作為試験を実施しました。組み込み基準を満たした場合に12時間以内に導入を開始する早期腎代替療法開始戦略群と、腎代替療法を従来通り適応となるか急性腎障害が72時間超えて持続する場合に開始する標準治療群とに無作為に割り振りました。主要転帰は90日以内の死亡としました。結果、3019例が参加、2927例を修正企画意図解析、早期戦略群1465例、標準戦略群1462例、腎代替療法は早期戦略群の1418例(96.8%)、標準戦略群の903例(61.8%)に実施されました。90日死亡は早期戦略群643例(43.9%)、標準戦略群639例(43.7%)に発生、有意差(relative risk, 1.00; 95% confidence interval [CI], 0.93 to 1.09; P=0.92)を認めませんでした。90日時点の生存例において、腎代替療法の持続的依存状態は、早期戦略群では814例中85例(10.4%)、標準戦略群では815例中49例(6.0%)で、早期戦略群で高率(relative risk, 1.74; 95% CI, 1.24 to 2.43)でした。有害事象は早期戦略群1503例中346例(23.0%)、標準戦略群1489例中245例(16.5%)で、有意差(P<0.001)を認めました。集中治療室で急性腎障害において、早期の腎代替療法の戦略は標準戦略と比べて90日死亡の減少と関連を認めませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2000741
急性腎障害に対して早期腎代替療法の有用性を検討した「STARRT-AKI」試験の結果、早期腎代替療法の有用性は認めませんでした。早期腎代替療法では有効性を認めなかったばかりか腎代替療法の持続、有害事象が増加しており、良かれと思ってやっている治療が裏目に出てしまっているかも知れないという報告です。慢性腎臓病合併の冠動脈病変に対して早期侵襲的治療の有効性が否定された「ISCHEMIA-CKD」試験の結果と通じるものがあります。詳しくは以前のまとめをご覧ください。
「2020/4/23(木)、進行腎臓病における冠動脈疾患の管理についての研究「Management of Coronary Disease in Patients with Advanced Kidney Disease: ISCHEMIA-CKD Research」の結果をまとめました。」
https://ochanomizunaika.com/15758
2020/7/16、急性腎障害において腎代替療法を開始するタイミングについての研究「Timing of Initiation of Renal-Replacement Therapy in Acute Kidney Injury: STARRT-AKI」の結果をまとめました。