2020/8/25、心電図所見の機械学習から左室拡張機能を予測する研究「Machine Learning Assessment of Left Ventricular Diastolic Function Based on Electrocardiographic Features」の要旨をまとめました。左室拡張機能障害(Left ventricular diastolic dysfunction)は心不全の病態生理において重要な役割を担っていると考えられていますが、心エコー検査を行う前に拡張機能を評価する臨床ツールは不十分です。左室拡張機能の検出の第一ステップとして、臨床、心電図所見を用いて心筋弛緩を推測、定量化する機械学習モデルを開発、北アメリカ4施設、全1202例を対象に多施設前向き研究を実施しました。3施設、814例から内部コホートを確立、トレーニング80%、内部検証20%に無作為に割り振りました。機械学習モデルは、信号処置心電図、従来心電図、臨床所見から開発、検証セットにて検証を行いました。4施設目からのデータ、外部検証セット388例にて、モデルの一般化可能性を評価しました。多様性にも関わらず、機械学習モデルは、心エコー検査にて測定された心筋弛緩速度e’値を、内部検証、内部検証(mean absolute error: 1.46 and 1.93 cm/s; adjusted R2 = 0.57 and 0.46)ともに定量的に予測しました。推定e’値によって、ガイドライン推奨異常心筋弛緩の閾値、拡張機能障害、左室駆出率による収縮機能障害の受信者操作特性の曲線下面積は、それぞれ内部検証(area under the curve [AUC]: 0.83, 0.76, and 0.75)、外部検証(0.84, 0.80, and 0.81)の精度で区別しました。さらに、推定e’値による左室拡張機能障害の推測は、年齢、性別調整後においても同様(AUC: 0.88 and 0.94 in the internal and external sets, respectively)でした。心筋弛緩の定量的予測は、容易に入手可能な臨床情報、心電図所見を用いて予測可能でした。この費用対効果に優れた戦略は、左室拡張障害の有無を評価する一次臨床ステップとして有益で、心不全の早期診断、管理において有用である可能性があります。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32819467
心電図の機械学習で左室拡張機能の指標であるe’値が予測可能であったという報告です。心電図所見から左室収縮機能を予測するという話であればおそらく心筋収縮を反映する心電図上のQRS波あたりがヒントになっているだろうと感覚的にも理解可能なのですが、既知の心電図所見で左室拡張機能を反映する心電図所見はないので、心室の拡張期に相当するST-T部分やU波の情報が関係しているのかわかりませんが、驚きです。人間の検出感度の限界、人智を超えています。心電図所見からe’値を予測可能であれば、日常診療の中で心エコーの必要がある例を拾い上げの参考になるので非常に有用です。
2020/8/25、心電図所見の機械学習から左室拡張機能を予測する研究「Machine Learning Assessment of Left Ventricular Diastolic Function Based on Electrocardiographic Features」の要旨をまとめました。