2020/11/13、高齢者、心血管転帰、死亡の危険因子、予測因子としての腎機能について調べた研究「Kidney Function as Risk Factor and Predictor of Cardiovascular Outcomes and Mortality Among Older Adults」の要旨をまとめました。

2020/11/13、高齢者、心血管転帰、死亡の危険因子、予測因子としての腎機能「Kidney Function as Risk Factor and Predictor of Cardiovascular Outcomes and Mortality Among Older Adults」の要旨をまとめました。推算糸球体濾過量、アルブミンクレアチニン比は心血管事象と関連をしていることは一般集団では明らかになっていますが、高齢者にとっても有用かどうかは十分にわかっていません。高齢者において、推算糸球体濾過量、アルブミンクレアチニン比と、脳卒中、心筋梗塞、死亡との関係を調べるために、集団ベースコホート研究を実施しました。「Berlin Initiative Study」、70歳以上、脳卒中または心筋梗塞の既往なし、1581例参加、血清クレアチニン、シスタチンCによる推算糸球体濾過量、アルブミンクレアチニン比分類、測定糸球体濾過量(measured GFR)436例、評価項目は脳卒中、心筋梗塞、全死亡としました。ハザード比、95%信頼区間、多変量調整Cox比例ハザードモデルにて算出しました。正味の再分類の改善(Net reclassification improvement: NRI)、C統計差、腎機能測定の予測ベネフィットを、従来の心血管リスクモデルと比較しました。結果、中央値8.2年間追跡、脳卒中193例、心筋梗塞125例、死亡531例発生しました。アルブミンクレアチニン比とは独立して、推算糸球体濾過量45-59は、60以上と比べて、脳卒中(HR 2.23; 95% CI, 1.55-3.21)と関連を認めましたが、心筋梗塞、全死亡とは関連を認めませんでした。推算糸球体濾過量45未満は、脳卒中1.99(1.23-3.20)、心筋梗塞1.38(0.81-2.36)、死亡1.57(1.20-2.06)と関連を認めました。アルブミンクレアチニン比30mg/g未満と比べて、30-300mg/gは脳卒中(HR 0.91, 95% CI 0.63, 1.33)とは関連は認めませんでしたが、心筋梗塞(HR 1.65, 95% CI 1.09, 2.51)、全死亡(HR1.63, 95% CI 1.34, 1.98)と関連を認めました。脳卒中の予測解析では、NRI for CKD-EPI cys、BIS2 crea+cys、FAS crea+cysは有意な正の関連を認めました。アルブミンクレアチニン比は心筋梗塞、全死亡の正味の再分類の改善と関連を認めました。限界として、推算糸球体濾過量、アルブミンクレアチニン比の分類は1回の検査のみに基づいていること、死亡原因の特異性のデータは欠如していることです。高齢者において、推算糸球体濾過量45-59、アルブミン尿なしは、脳卒中と関連を認めましたが、心筋梗塞、全死亡とは関連を認めませんでした。対照的に、アルブミンクレアチニン比30-300mg/gは、心筋梗塞、全死亡と関連を認めましたが、脳卒中とは関連を認めませんでした。将来的には、シスタチンCベースの推算糸球体濾過量は、高齢者の脳卒中のリスク予測を改善する可能性があると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ajkd.org/article/S0272-6386(20)31093-3/fulltext
腎機能、アルブミン尿、いずれも心血管疾患のリスク因子ですが、腎機能は脳卒中の予測と関連を認めたのに対し、アルブミン尿は心筋梗塞と全死亡の予測と関連を認めたという報告です。腎機能だけではなく、アルブミン尿の評価も重要ということでしょう。お茶の水循環器内科で定期的に腎機能の評価、尿検査をするのはこのためです。


PAGETOP