2020/5/19、血圧降下と認知症、認知機能障害の発症の関係について調べた系統レビュー、メタ解析「Association of Blood Pressure Lowering With Incident Dementia or Cognitive Impairment: A Systematic Review and Meta-analysis」の要旨をまとめました。認知症、認知機能障害の予防のための血圧降下の有益性は十分にわかっていません。血圧降下と認知症、認知機能障害との関係を調べるために、2019年までに公開された、血圧降下と認知機能転帰との関係について評価した無作為化試験、PubMed、EMBASE、CENTRALにて収集、対照群としてプラセボ、他の降圧薬、高い血圧対象としました。データは独立した2名の筆者によってスクリーニング、無作為化影響メタ解析モデルを使用、蓄積治療効果と信頼区間を算出しました。主要評価項目は認知症、認知機能障害としました。副次評価項目は認知機能の低下、認知機能テストスコアの変化としました。14の無作為化試験が組み込み基準に合致、96158例、そのうち、12本は追跡期間中の認知症の発症について、3本は認知症と認知機能障害の複合について、一次メタ解析に含めました。8本は認知機能低下、8本は認知機能テストスコアの変化について報告していました。試験参加者の年齢中央値69歳、女性40617例（42.2%）でした。ベースラインの収縮期血圧中央値154mmHg、拡張期血圧中央値83.3mmHgでした。追跡期間中央値49.2ヶ月でした。12試験、92135例の解析の結果、降圧薬による血圧降下は、対照群と比べて、認知症、認知機能障害リスク減少と有意に関連（7.0% vs 7.5% of patients over a mean trial follow-up of 4.1 years; odds ratio [OR], 0.93 [95% CI, 0.88-0.98]; absolute risk reduction, 0.39% [95% CI, 0.09%-0.68%]; I2 = 0.0%）、8試験、認知機能低下と有意な関連（20.2% vs 21.1% of participants over a mean trial follow-up of 4.1 years; OR, 0.93 [95% CI, 0.88-0.99]; absolute risk reduction, 0.71% [95% CI, 0.19%-1.2%]; I2 = 36.1%）を認めました。血圧降下は認知機能テストスコアの変化と有意な関連は認めませんでした。無作為化試験のメタ解析の結果、降圧薬による血圧降下は対照群と比べて、認知症、認知機能障害の発症リスク低下と有意な関連を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32427305
降圧薬と認知症の関係です。最近は減りましたが、降圧薬で認知症が増えると不安を煽るようなテレビや週刊誌の記事がありましたが、メタ解析の結果は逆で、高血圧を放置したほうが認知症リスクは高く、血圧コントロールしたほうが認知症リスクは低いという報告です。

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