2020/11/21、70歳から100歳、LDLコレステロール上昇と心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患リスクについて調べた研究「Elevated LDL cholesterol and increased risk of myocardial infarction and atherosclerotic cardiovascular disease in individuals aged 70-100 years: a contemporary primary prevention cohort」の要旨をまとめました。過去の研究の所見からは、70歳以上の高齢者においてLDLコレステロールの上昇は心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患のリスク上昇とは関連がないことが示唆されています。70歳から100歳の集団において本仮説を検証するために、コペンハーゲン全住民研究「CGPS」(Copenhagen General Population Study)、20歳から100歳、ベースラインにて動脈硬化性心血管疾患なし、糖尿病なし、スタチン投与なしを対象に解析しました。標準病院検査にてLDLコレステロール測定、心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患の絶対発生率、ハザード比を計算、5年間の事象予防のための治療必要数(number needed to treat: NNT)を算出しました。2003年から2015年、「CGPS」から91131例登録しました。2018年まで、中央値7.7年間の追跡、心筋梗塞1515例、動脈硬化性心血管疾患3389例、発生しました。LDLコレステロール値1.0mmol/L上昇ごとの心筋梗塞リスクは、全年代において34%上昇(HR 1·34, 95% CI 1·27-1·41)、特に70歳から100歳までの年代も含む、全ての年代においても当てはまりました。LDLコレステロール値1.0mmol/L上昇ごとの動脈硬化性心血管疾患リスクは全年代において16%上昇(HR 1·16, 95% CI 1·12-1·21)、特に70歳から100歳までにおいても当てはまりました。心筋梗塞リスクはLDLコレステロール値5.0mmol/L以上(例えば、家族性高コレステロール血症の可能性)、LDLコレステロール値3.0mmol/L未満と比べて、80歳から100歳(HR 2·99, 95% CI 1·71-5·23)、70歳から89歳(1·82, 1·20-2·77)でした。LDLコレステロール値1.0mmol/Lごとの1000人年あたりの心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患事象は70歳から100歳においても高値、若年と比べて事象数は低値でした。中等量から高用量のスタチンを投与した場合の5年間の心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患事象予防のための治療必要数は70歳から100歳においても低下、若年と比べて治療必要数は増加しました。同年代一次予防コホートにて、70歳から100歳、LDLコレステロール高値は心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患の高い絶対リスク、事象予防のための5年間の治療必要数は最も少なかったです。本データから70歳から100歳の高齢者における心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患負荷を現象させるための予防戦略にとって重要なものとなると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33186534
70歳から100歳の高齢者における脂質管理について、LDLコレステロール高値はやはり心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患のハイリスクであり、スタチン投与による心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患の一次予防効果はあるとの報告です。高齢者に対するスタチン投与には懐疑的な考え方もあるのですが、エビデンス上は効果はあるとの結果です。スタチン恐るべしですね。
2020/11/21、70歳から100歳、LDLコレステロール上昇と心筋梗塞、動脈硬化性心血管疾患リスクについて調べた研究「Elevated LDL cholesterol and increased risk of myocardial infarction and atherosclerotic cardiovascular disease in individuals aged 70-100 years: a contemporary primary prevention cohort」の要旨をまとめました。