2020/12/8、LDLコレステロールと全死亡、特定原因死亡との関係を調べたデンマークの研究「Association between low density lipoprotein and all cause and cause specific mortality in Denmark: prospective cohort study」の要旨をまとめました。

2020/12/8、LDLコレステロールと全死亡、特定原因死亡との関係を調べたデンマークの研究「Association between low density lipoprotein and all cause and cause specific mortality in Denmark: prospective cohort study」の要旨をまとめました。一般住民において、LDLコレステロール値と全死亡との関係、LDLコレステロールと全死亡リスク低下との関係を調べるために、デンマークにて前向きコホート研究を実施しました。コペンハーゲンの一般住民を対象に、2003年から2015年まで、中央値9.3年間追跡しました。全国デンマーク市民登録システムから無作為に個人を選択しました。登録時のLDLコレステロール値、全死亡を評価、Cox比例ハザード比モデルにて分類しました。主要評価項目は全死亡としました。副次評価項目は原因特定死亡、心血管、癌、その他の死因としました。結果、108243例、20歳から100歳、試験期間中11376例(10.5%)死亡、年齢中央値81歳でした。LDLコレステロール値と全死亡リスクとの間にはU字関係を認め、LDLコレステロール値が高過ぎても低過ぎても全死亡リスクの上昇と関連を認めました。LDLコレステロール濃度3.4から3.9mmol/L、132から154mg/dLと比べて、全死亡の多変量調整後ハザード比は、LDLコレステロール濃度1.9mmol/L、70mg/dLの場合1.25(95% confidence interval 1.15 to 1.36)、LDLコレステロール濃度4.8mmol/L、189mg/dL超の場合1.15(1.05 to 1.27)でした。全死亡リスク低値と関連するLDLコレステロール濃度は脂質低下治療を受けていない集団において3.6mmol/L、140mg/dL、脂質低下治療を受けている集団においては2.3mmol/L、89mg/dLでした。同様の結果は女性においても男性においても、年代群においても、癌、その他の死亡においても認められました。LDLコレステロール値のいかなる上昇は心筋梗塞リスク上昇と関連を認めました。一般住民において、LDLコレステロール値の低値、高値は全死亡リスクの上昇と関連しており、最も全死亡のリスクが低いコレステロール濃度は3.6mmol/L、140mg/dL前後でした。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.bmj.com/content/371/bmj.m4266
デンマークの住民コホートからの報告です。コレステロールが高いと心筋梗塞になりやすいという関係は確立していますが、癌は終末期のステージではコレステロールが低値となることも事実です。原因と結果の関係、因果関係が逆であることに注意が必要です。癌があるとコレステロールは低くなるという関係のはコレステロールは結果であるのに対し、コレステロールが高過ぎると心筋梗塞になりやすいという関係はコレステロールが原因です。心筋梗塞になるとコレステロールが高くなる、コレステロールが低いと癌になる、という訳ではありません。因果関係を十分に理解しないで、あるいは意図的に関心を惹くために、間違ったことを書いてある週刊誌の記事等がありますので注意です。心筋梗塞でなくなる人もいれば、癌でなくなる人もいるため、総合するとコレステロールは中間くらいの人が寿命が長いという結果になります。日経メディカルでも記事になっていました。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/bmj/202101/568512.html

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