2020/11/19、糖尿病の新規発症または増悪と膵臓癌の早期診断について調べた日本の研究「New-Onset or Exacerbation of Diabetes Mellitus Is a Clue to the Early Diagnosis of Pancreatic Cancer」の要旨をまとめました。

2020/11/19、糖尿病の新規発症または増悪と膵臓癌の早期診断について調べた日本の研究「New-Onset or Exacerbation of Diabetes Mellitus Is a Clue to the Early Diagnosis of Pancreatic Cancer」の要旨をまとめました。膵管腺癌(Pancreatic ductal adenocarcinoma: PDAC)は膵臓癌の大多数を占め、人間の悪性腫瘍の中で最も予後が悪いものの一つです。ほとんどの膵臓癌は症状進行後、ステージ進行の状態で診断されます。無症状の膵管腺癌の早期発見は予後改善のため重要です。糖尿病は膵管腺癌のリスク因子であり、糖尿病、特に新規発症の糖尿病は膵管腺癌の診断のきっかけになる可能性があります。しかしながら、診断機会としての糖尿病と膵管腺癌の予後への影響は十分にわかっていませんでした。膵管腺癌489例、膵管腺癌の診断のきっかけ、臨床的特徴、予後を比較、後ろ向き解析を実施しました。疼痛、黄疸等の症状出現をきっかけに膵管腺癌の診断を受けた318例、糖尿病151を含む、糖尿病の新規発症または増悪をきっかけに診断を受けた無症状例53例、検診、他の疾患の検査やフォローアップで偶発的に診断を受けた118例を比較しました。糖尿病を含む無症状例は、症状例と比べて、腫瘍が小さく、進行ステージが早期で、切除可能性(resectability)が高い率でした。糖尿病をきっかけに診断された無症状例は、症状がある例比べて予後が良く(median survival time, 771 days vs 343 days, P < 0.001)、偶発的に発見された例と同等(869 days)でした。糖尿病、症状がある場合には生存期間のアドバンテージは認められませんでした。結論として、糖尿病をきっかけに無症状で発見された場合は症状をきっかけに発見された場合よりも良い予後でした。膵管腺癌の無症状例において、糖尿病関連の兆候は早期発見につながる可能性があります。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33342915
早期の膵臓癌は自覚症状がほとんどないため早期発見は難しいのが現状ですが、糖尿病の急激な増悪は膵臓癌や大腸癌を疑うという経験則は糖尿病診療に従事している医師は知っています。糖尿病で通院しているのに、いきなりCTやMRIを奨めらることもあるのはこのためです。勿論、精査した結果、食事、運動等の生活指導の悪化が原因であったという割合のほうが多いですが、過去に膵臓癌の早期発見の経験はあります。生活習慣の変化では説明の出来ない糖尿病の悪化を見た場合には原則、消化器悪性腫瘍をスクリーニングするようにしています。詳しくは主治医までご相談ください。
メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2021/0105534225

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