2020/12/15、非虚血性の冠動脈の動脈硬化の冠血流予備量比の合計値の5年転帰予測について調べた研究「Global Fractional Flow Reserve Value Predicts 5-Year Outcomes in Patients With Coronary Atherosclerosis But Without Ischemia」の要旨をまとめました。

2020/12/15、非虚血性の冠動脈の動脈硬化の冠血流予備量比の合計値の5年転帰予測について調べた研究「Global Fractional Flow Reserve Value Predicts 5-Year Outcomes in Patients With Coronary Atherosclerosis But Without Ischemia」の要旨をまとめました。冠動脈主要3枝の冠血流予備量比(fractional flow reserve: FFR)の合計値は、全体の動脈硬化性負荷を生理学的指標です。安定冠動脈疾患、虚血誘発狭窄を認めない例において、冠血流予備量比の合計値が長期臨床転帰の予測となるかどうか評価するために、1122例、冠血流予備量比0.80超の有意狭窄なし275例、1枝以上の有意狭窄ありで経皮的冠動脈形成術治療後、経皮的冠動脈形成術後の冠血流予備量比0.80超847例、5年間の主要有害心血管事象、全死亡、心筋梗塞、血行再建を収集しました。冠血流予備量比の合計値によって、2.80以下、2.80-2.88、2.88以上の3つに分類しました。冠血流予備量比の合計値の最も低い群は、冠血流予備量比の合計値の中程度、最も高い群と比べて、5年間の主要有害心血管事象の高値(27.5% versus 22.0% and 20.9%, respectively; log-rank P=0.040)を認めました。5年間の主要有害心血管事象の発生率の高値は、主に、冠血流予備量比の合計値の最も低い群における血行再建率の高値(16.4% versus 11.3% and 11.8%, respectively; log-rank P=0.038)によるものでした。多変量モデルにて、冠血流予備量比の合計値が0.1単位増加することは、主要有害心血管事象(hazard ratio [HR], 0.988; 95% CI, 0.977-0.998; P=0.023)、心筋梗塞(HR, 0.982; 95% CI, 0.966-0.998; P=0.032)、血行再建(HR, 0.985; 95% CI, 0.972-0.999; P=0.040)の有意な減少と関連を認めました。虚血誘発狭窄は認めない場合においても、冠血流予備量比の合計値の低値は、動脈硬化性負荷の生物学的指標として、5年間追跡において、主要有害心血管事象の高リスクと関連していました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33283600
冠動脈狭窄症における血行再建の適応判断において、関心冠動脈の冠血流予備量比による虚血の有無の評価が重要ですが、血行再建の適応とならない場合においても、3枝の冠動脈の冠血流予備量比の合計値はその後の血行再建の予測因子になるという報告です。3枝の冠血流予備量を足し算してみようという発想になかなかならなかったので興味深い着眼点です。

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