「循環器内科.com」に「一過性脳虚血発作」についてまとめました。
一過性脳虚血発作→http://循環器内科.com/tia
【一過性脳虚血発作とは】
一過性脳虚血発作(いっかせいのうきょけつほっさ)とは、脳の血管が一時的に血流が悪くなって、脳梗塞のような症状が短時間出現する症状です。脳梗塞の前触れ症状として注意が必要です。心筋梗塞(Acute myocardial infarction: AMI)の前触れ症状として不安定狭心症(Unstable angina pectoris: UAO)があり、両者をまとめて急性冠症候群(Acute coronary syndrome: ACS)と呼ぶのと同様に、脳梗塞(Cerebral infarction: CI)の前触れ症状として一過性脳虚血発作(Transient ischemic attack: TIA)があり、両者をまとめて急性脳血管症候群(Acute cerebrovascular syndrome :ACVS)として、より早期に診断、治療していくという認識に脳卒中を専門とする医師の間ではなって来ています。具体的には、「脳卒中診療ガイドライン2015」によると、TIA発症後90日以内に脳卒中を発症するリスクは15~20%で、そのうち約半数はTIA発症後48時間以内に発症していることがわかっており、TIA発症平均1日後に治療を受けた場合、90日以内の大きな脳卒中発症率が2.1%となり、平均20日後に治療を受けた場合に比べて90日以内の大きな脳卒中発症率が80%軽減されたという報告があります。脳梗塞で一度失ってしまった神経の機能を回復させることは非常に難しく、症状がすぐに消えてしまったからと言って放置せずに、早期に診断、適切な治療を開始することが重要です。
【一過性脳虚血発作の症状】
TIAを疑う症状としては、脳の血管の血流が悪くなり、虚血に陥った血管から先の血流が途絶え、脳の神経細胞に必要な酸素と栄養分が行き渡らなくなった場所の神経機能が失われる症状、神経脱落症状が発症します。症状は起こる場所や虚血の範囲や程度によって様々で、片側の上肢や下肢の痺れや麻痺、片側の顔が動かしにくくなる、呂律障害、片側の眼が見えなくなる、などが特徴的です。24時間以内とされていましたが、実際は数分間から60分以内の症状の持続のことが多いです。症状はすぐに消えてしまうこともありますが、それは重症の脳梗塞の前触れ症状の可能性があります。TIAだけで激しい頭痛や意識障害が起こることは通常稀です。TIAは早期の診断、早期の治療が必要ですので、頭痛がないからと言って気のせいなどと様子を見ずに、速やかに脳卒中専門病院を受診しましょう。症状は消失したり、変動しますので、何時何分からどういった症状が何分間くらい出現したのか、具体的に伝えられるようにしましょう。
脳卒中や一過性脳虚血発作を疑う症状をシンプルにまとめたものとして「FAST」という覚え方があります。顔の麻痺(Face: F)、腕の麻痺(Arm: A)、言葉の障害(Speach: S)のうち一つでも異常を認めたら、発症時刻(Time: T)を確認して、速やかに脳卒中専門の医療機関に向かいましょう。早期診断、早期治療が非常に重要ですので、救急車を呼ぶことをためらってはいけません。TIAについて詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。
→http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph96.html
→http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/disease/stroke.html
【一過性脳虚血発作の診断】
一過性脳虚血発作などの神経脱落症状が突然発症している場合、一過性脳虚血発作または脳卒中の発症を疑い速やかに頭部画像検査を行います。まずは大きく、出血なのか梗塞なのか、どちらでもないのか、が重要ですので、頭部CTにて脳出血、くも膜下出血を検出します。頭部CTで出血が否定されたら、一過性脳虚血発作で脳梗塞には陥っていないか、脳梗塞を生じているか、虚血か梗塞かが重要ですので、次に頭部MRIを撮影します。頭部MRI、特に拡散強調画像(Diffusion weighted image: DWI)は発症早期の脳梗塞も検出可能です。脳卒中の病型診断、原因の精査のために、通常、MR血管画像(Magnetic resonance angiography: MRA)、頸動脈エコー、心原性脳塞栓症の鑑別のため心電図、心エコー、凝固や線溶マーカーも含めた採血検査も行います。一過性脳虚血発作と診断した場合には、次にTIAを起こす原因を特定することが重要で、特に心房細動などの不整脈が原因の心原性か、総頸動脈や内頚動脈、脳の中の太い血管の動脈硬化が原因か、心原性か非心原性かの鑑別が非常に重要です。
【一過性脳虚血発作の治療】
一過性脳虚血発作と診断した場合、TIA発症後の脳卒中の半数は、TIA発症後48時間以内に発症していることがわかっており、速やかに治療を開始することが重要です。頭部MRI、頸動脈エコー、心電図、心エコーなどの検査結果から一過性脳虚血発作の原因を特定し、原因に応じた治療を開始します。具体的には、主に抗凝固療法が必要となる心原性か、主に抗血小板薬療法が必要となる非心原性かの鑑別が重要です。また、さらに頚動脈狭窄症や頸動脈プラーク等の内頚動脈病変が認められた場合には内頚動脈病変に対する外科的治療があります。
1、心原性の一過性脳虚血発作に対して、心原性脳塞栓症の治療に準じて抗凝固療法を行います。
心原性脳塞栓症→http://循環器内科.com/cce
・エリキュース(アピキサバン)、プラザキサ(ダビガトラン)、イグザレルト(リバーロキサバン)、リクシアナ(エドキサバン)、直接経口抗凝固薬(DOAC: Direct oral anticoagulant)などと呼ばれるグループの抗凝固療薬です。心原性脳塞栓症の予防、再発予防に対して使います。
・ワーファリン(ワルファリン)、昔からある抗凝固薬です。僧帽弁狭窄症や人工弁置換術後などはワーファリンによる抗凝固療法が必要です。
2、非心原性の一過性脳虚血発作に対して、主にラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の治療に準じて抗血小板療法を行います。
ラクナ梗塞→http://循環器内科.com/li
アテローム血栓性脳梗塞→http://循環器内科.com/atbi
・バイアスピリン(アスピリン)、プラビックス(クロピドグレル)、パナルジン(チクロピジン)、プレタール(シロスタゾール)、抗血小板薬です。血液が固まるのを防ぎ、脳梗塞を予防します。
非心原性の一過性脳虚血発作を起こした患者さんは動脈硬化のリスク因子として、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の生活習慣病が背景にあることがほとんどですので、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙などの動脈硬化のリスク因子があれば、それぞれの治療をしっかりと行います。
・高血圧症→http://循環器内科.com/ht
・脂質異常症→http://循環器内科.com/dl
・糖尿病→http://循環器内科.com/dm
・大量飲酒→http://循環器内科.com/ld
3、高度の内頚動脈狭窄症等の内頚動脈病変に対しては、頸動脈内膜剥離術(Carotid endarterectomy: CEA)と頸動脈ステント留置術(Carotid artery stenting: CAS)の二種類の治療法があり、リスク、適応基準などによってそれぞれ判断されますが、専門的になりますので割愛します。
【一過性脳虚血発作の予防】
一過性脳虚血発作の予防は脳梗塞の予防と同様です。脳梗塞、動脈硬化のリスク因子である高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、それから心原性脳塞栓症の原因である不整脈、心房細動です。それぞれ治療法や予防法をまとめましたのでご覧ください。同じ一過性脳虚血発作でも、動脈硬化のリスク因子が多いほど脳梗塞を発症するリスクが高いです。ABCD2スコアという一過性脳虚血発作発症後の脳梗塞発症リスクの評価ツールがあり、スコアの合計点が高いほど脳梗塞発症リスクが高いことがわかっています。一般的に3点以上では脳梗塞予防のための治療を開始します。
・高血圧症→http://循環器内科.com/ht
・脂質異常症→http://循環器内科.com/dl
・糖尿病→http://循環器内科.com/dm
・大量飲酒→http://循環器内科.com/ld
一過性脳虚血発作及び脳梗塞の予防についてさらに詳しくは国立循環器病研究センターのページをご覧ください。
→http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph96.html
全ての薬には副作用がありますが、主治医はデメリット、メリットを総合的に考えて一人ひとりに最適な薬を処方しています。心配なことがあれば何なりと主治医またはかかりつけ薬局の薬剤師さんまでご相談ください。
【重要】ご来院前にご確認ください。
お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。対象は狭心症、心筋梗塞等の冠動脈疾患、心房細動を始めとする不整脈、心血管疾患の危険因子としての高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病、慢性心不全等の循環器疾患です。一般的な内科診療は行っていませんので予めご了承ください。都内の医療機関探しは東京都医療機関案内サービスひまわりをご参考ください。
東京都医療機関案内サービスひまわり:03-5272-0303
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【お茶の水循環器内科】
お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。当院は2014年秋、「心血管疾患の一次予防」を理念に神田小川町にてスタートしました。2016年春、現在の神田神保町にお引越し、2018年春、「その医療は心筋梗塞を減らすだろうか?」という行動規範のもと、循環器専門の医療機関になりました。世の中には救える病気とそうでない病気があります。その中で、心筋梗塞と脳卒中は血管の故障が原因であり、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、心房細動等の心血管疾患の危険因子をコントロールすることで十分に予防可能です。心血管疾患の危険因子に対して適切な治療介入と治療継続のために、お茶の水循環器内科は夜間も土日も診療をオープンにしています。心筋梗塞と脳卒中を防ぐこと、これが当院のミッションです。お茶の水循環器内科をどうぞよろしくお願いいたします。
お茶の水循環器内科院長五十嵐健祐
【具体的な診療範囲】
お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。循環器内科とは心臓と血管を専門に診る診療科です。具体的には、狭心症、心筋梗塞等の冠動脈疾患、心房細動を始めとする不整脈、心血管疾患の危険因子としての高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病、慢性心不全等の循環器疾患です。循環器内科の診療範囲を具体的にまとめました。
・冠動脈疾患(急性心筋梗塞、労作性狭心症、他)
・心筋梗塞後、抗血小板療法、ステント留置後の管理、バイパス術後の管理・慢性心不全の管理
・心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、他)
・弁置換術後の管理、弁形成術後の管理、抗凝固療法・心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症、高血圧性心肥大、他)
・大動脈瘤、大動脈解離後の管理
・不整脈(心房細動、房室ブロック、上室期外収縮、心室期外収縮、他)
・心房細動の抗凝固療法、心原性脳塞栓症の予防、アブレーション治療の適応の評価、アブレーション治療後の管理
・脳卒中、脳血管障害、脳梗塞(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症)、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、脳卒中後の管理
・高血圧症、二次性高血圧症
・脂質異常症、家族性高コレステロール血症
・2型糖尿病、1型糖尿病、糖尿病合併症の管理、インスリン管理
・慢性腎臓病、腎硬化症の管理、糖尿病性腎症の管理
・その他、健診後の再検査、食事指導、運動指導、禁煙外来、など
以上、心臓と血管を専門に診る診療科が循環器内科です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病等の生活習慣病も心血管疾患の危険因子として循環器内科の守備範囲です。心筋梗塞や脳卒中にならないようにする、一度なってしまっても再発しないようにする、というのが循環器内科の仕事です。予防に勝る治療はありません。お気軽に主治医までご相談ください。