2020/4/1(水)、冠動脈石灰化と心血管疾患の一次予防におけるアスピリンの適応について検討した研究「Coronary Artery Calcium for Personalized Allocation of Aspirin in Primary Prevention of Cardiovascular Disease in 2019: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis: MESA」の結果をまとめました。

2020/4/1(水)、冠動脈石灰化と心血管疾患の一次予防におけるアスピリンの適応について検討した研究「Coronary Artery Calcium for Personalized Allocation of Aspirin in Primary Prevention of Cardiovascular Disease in 2019: The Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis: MESA」の結果をまとめました。アメリカ心臓病学会とアメリカ心臓病協会の最新の一次予防ガイドラインにおいて低用量アスピリンの推奨は、40-70歳で動脈硬化性心血管疾患のリスクが高く、出血リスクが高くない場合のみとされています。しかしながら、ベストな投与対象の選択についてはクリアではありません。心血管疾患の相対リスク低下と出血リスクに関する2019年のメタアナリシスのデータを用いて、冠動脈石灰化の値が一次予防におけるアスピリンの適応に有用かどうか調べるために、「MESA」研究(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)の参加者6470例を対象に、動脈硬化性心血管疾患リスクを蓄積コホートの式(Pooled Cohort Equations: PCE)から3つの層別化、5%未満、5-20%、20%以上に分類しました。全ての参加者は冠動脈石灰化スコア(Coronary Artery Calcium scores: CAC scores)を評価し、CACスコア0、1-99、100以上、400以上に分類しました。心血管疾患イベントの12%相対リスク減少は、5年治療必要数(5-year number needed to treat: NNT5)、大出血イベントの42%相対リスク増加は5年害必要数(5-year number needed to harm: NNH5)として計算しました。
結果、アメリカ心臓病学会とアメリカ心臓病協会のガイドラインでは動脈硬化性心血管疾患リスクが20%以上と推定される場合をハイリスクと定義しており、MESA研究の参加者の5%のみがアスピリンの適応考慮に該当しました。ベネフィットと害を計算したところ、70歳未満で出血ハイリスクではない例3550例のみアスピリンの適応は限定されました。アスピリンによる心血管疾患予防のNNT5は476、NNH5は355でした。NNT5は動脈硬化性心血管疾患リスク層別化においてNNH5と同等かそれ以上でしたが、逆に、CAC 100以上、CAC 400以上のグループでは、NNT5はNNH5よりも低値でした。CAC 100以上では動脈硬化性心血管疾患のNNT5 140、NNH5 518で、CAC 0の場合はNNT5 1190、NNH5 567とでした。冠動脈石灰化は一次予防におけるアスピリンの適応について蓄積コホートの式(Pooled Cohort Equations: PCE)よりも優れる可能性があります。2019年のアメリカ心臓病学会とアメリカ心臓病協会のガイドラインの推奨を適応する場合には、同時に冠動脈石灰化スコアによって個別に将来リスクを評価し、一次予防におけるアスピリンの安全な適応を考慮するのも良いでしょうなどと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/CIRCULATIONAHA.119.045010
NNTやNNHという指標は普段聞き慣れないかも知れませんが、NNTは1例の治療効果を得るのに必要な投与数で一般に少なければ少ないほど良く、NNHは1例の害が発生するのに必要な投与数で一般に多いほうが良い指標です。NNTがNNHを大きく下回る治療はやったほうが良い、そうでない治療はやらないほうが良い、NNTとNNHが同程度の場合はメリットとデメリットが同程度発生するのでやる価値はない、などと判断に使います。アスピリンの一次予防効果については以前から様々な議論がありますが、一定数有益であるセグメントが存在することは事実です。詳しくは主治医とご相談ください。


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