2020/3/31(火)、肥大型心筋症と左室収縮障害についての研究「Hypertrophic Cardiomyopathy with Left Ventricular Systolic Dysfunction: Insights from the SHaRe Registry」の結果をまとめました。

2020/3/31(火)、肥大型心筋症と左室収縮障害についての研究「Hypertrophic Cardiomyopathy with Left Ventricular Systolic Dysfunction: Insights from the SHaRe Registry」の結果をまとめました。末期(end-stage)という用語は、肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy: HCM)で、左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)50%未満と定義される左室収縮障害(left ventricular systolic dysfunction: LVSD)を来した肥大型心筋症、左室収縮障害を伴う肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy-left ventricular systolic dysfunction: HCM-LVSD)を指します。HCM-LVSDの予後は不良と報告されていましたが、比較的稀であるため、自然経過は十分にわかっていませんでした。11施設の大規模な肥大型心筋症専門センター、国際サルコメア心筋症レジストリ(Sarcomeric Human Cardiomyopathy Registry: SHaRe)はHCM-LVSDの自然経過を記述するために使われました。Cox比例ハザードモデルを用いて、予後予測因子を特定しました。結果、6793例の肥大型心筋症のうち、553例(8%)がHCM-LVSDの診断基準を満たしました。HCM-LVSDの75%は臨床関連事象、35%は複合転帰、全死亡128例、心移植(cardiac transplantation)55例、左室補助装置埋め込み(left ventricular assist device implantation)9例を認めました。HCM-LVSDと認められた後は、複合転帰までの時間の中央値は8.4年でした。しかしながら、実際には自然経過には個人差があります。複合転帰の有意な予測因子は、サルコメア遺伝子変異、サルコメア関連遺伝子変異(HR 5.6 95%CI 2.3-13.5)、心房細動(HR 2.6 95%CI 1.7-3.5) 、左室駆出率35%未満(HR 2.0 1.3, 2.8)を認めました。HCM-LVSDの新規発生は15年間で7.5%未満でした。HCM-LVSDの有意な予測因子は、ベースラインにおける左室サイズの大きさ(HR 1.1 [1.0-1.3)、左室壁厚(HR 1.3 [1.1, 1.4])、左室駆出率50-60%(HR 1.8 [1.2, 2.8]-2.8 [1.8, 4.2])でした。心臓MRIにおける遅延ガドリニウム造影(late gadolinium enhancement: LGE)の所見(HR 2.3 [1.0, 4.9])、サルコメア遺伝子変異、サルコメア関連遺伝子変異(HR 1.5 [1.0, 2.1])、特にthin filament遺伝子変異(2.5 [1.2, 5.1])でした。HCM-LVSDは肥大型心筋症の約8%を占めていました。HCM-LVSDの自然経過は多様ですが、75%は有害事象、35%は収縮障害の出現後、中央値8.4年で死亡相当でした。臨床系特徴に加えて、遺伝子基盤として複数のサルコメア変異、thin filament変異がリスク因子として関連していました。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.119.044366
肥大型心筋症は未だにわかっていないことが多い心疾患です。サルコメア遺伝子、サルコメア関連遺伝子が関与していること、診断基準は確立していますが、治療法は確立していません。重症例の根本治療は心移植です。一般的に心臓への負荷を軽減することを期待して、β遮断薬、αβ遮断薬等が使われます。詳しくは主治医までご相談ください。


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