2020/3/30(月)、公衆浴場においてSRAS-CoV-2感染が起こりうるという中国の研究「Possible Transmission of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) in a Public Bath Center in Huai’an, Jiangsu Province, China」の結果をまとめました。

2020/3/30(月)、公衆浴場においてSRAS-CoV-2感染が起こりうるという中国の研究「Possible Transmission of Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2 (SARS-CoV-2) in a Public Bath Center in Huai’an, Jiangsu Province, China」の結果をまとめました。2019年12月、SARS-CoV-2(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)によるCOVID-19は中国武漢で発生、25カ国に拡大しました。SARS-CoV-2は、SARS-CoV(severe acute respiratory syndrome coronavirus)、MERS-CoV(Middle East respiratory syndrome coronavirus)と関連があり、感染力が強いのが特徴です。確定的な感染経路は飛沫(respiratory droplets)、物理的な接触(physical contact)で、潜伏期間(incubation period)は3-7日間と言われていますが、24日間も続くことがあります。武漢から700km北東にある江蘇省淮安(Huai’an)でクラスター感染では、公衆浴場(public bath center)の浴室にて8人へ感染があったようです。中国江蘇省淮安第四病院にて、2020/1/25から2/10の間に同じ公衆浴場にいた合計9名が入院しました。咽頭拭い液が採取され、定量逆転写PCR(polymerase chain reaction)法によってSARS-CoV-2が同定されました。CTと血液検査も行われました。淮安第四病院の倫理委員会、インフォームドコンセントが取得、症例蓄積の報告ガイドラインにそって研究を行いました。統計学的有意の事前推定の閾値の設定はありませんでした。結果、公衆浴場は男性用で、300平米、温度は25度から41度、湿度は約60%でした。スイミングプール、シャワー、サウナがありました。最初の1名は武漢に旅行に行っており、2020/1/18に公衆浴場へ行き、シャワーを浴びました。2020/1/19に発熱が始まり、2020/1/25にCOVID-19と診断されました。次の7名は1/19に3名、1/20に1名、1/23に2名、1/24に1名、同じ公衆浴場でサウナ、水泳等をしました。COVID-19に関連する症状は、発熱、咳、頭痛、胸部閉塞感で、公衆浴場へ行った日から6日から9日後に出現しました。9例目は公衆浴場の勤務者で、1/30に発症しました。全例、逆転写PCR法にて陽性でした。年齢の中央値は35歳(24-50歳)でした、8例(89%)が発熱を訴え、5.78日(SD 2.99)続きました。7例(78%)が咳、3例(33%)が衰弱(debilitation)、2例(22%)が胸部絞扼感(chest distress)、1例(11%)が食欲不振を訴えました。下痢、筋肉痛、鼻水、頭痛はありませんでした。CRPの上昇は9例全例に認め、中央値は3.34mg/dL(SD 3.18)でした。リンパ球減少は3例(33%)、LDH上昇は3例(33%)、GOT上昇は2例(22%)、CT検査ではすりガラス状陰影が9例全例に認められました。2020/2/10現在、呼吸補助を必要とする例はありません。今までの研究では、高温多湿(high temperature and humidity)の環境ではウイルスの感染率は有意に弱まると報告されていました。しかしながら、この研究から判断すると、SARS-CoV-2の感染力は暖かく湿度の高い条件でも弱まることを示していません。高温多湿の公衆浴場においてクラスター症例が発生したことを強調します。全8例は、公衆浴場の利用者か勤務者で、公衆浴場の訪問から6日から9日以内に症状が出現、SRAS-CoV-2はこのような環境でも拡大、感染を起こすことが出来ることが示唆されます。感染経路は飛沫、接触と言われていますが、高温多湿の環境においても発生することが考えられます。この結果は疫学的な手がかりの可能性を提供します。この研究は公衆浴場における感染経路に関する詳細な情報を欠いていることに限界があると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2763473
高温多湿な環境ではウイルスの活動性が弱まるので、安全ではないかという意見があったのですが、決して安心は出来ないという報告です。温度は25度から41度、湿度は約60%とのことで、100度前後のドライサウナ、湿度100%に近いスチームサウナとは条件が異なるという指摘もありますが、明確なエビデンスはありません。サウナや温泉が大好きな院長も最近は自粛しています。


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