2020/4/15(水)、重症心不全における心移植待機戦略と半永久的機械的循環補助単独を比較した研究「Strategies of Wait-listing for Heart Transplant vs Durable Mechanical Circulatory Support Alone for Patients With Advanced Heart Failure」の結果をまとめました。

2020/4/15(水)、重症心不全における心移植待機戦略と半永久的機械的循環補助単独を比較した研究「Strategies of Wait-listing for Heart Transplant vs Durable Mechanical Circulatory Support Alone for Patients With Advanced Heart Failure」の結果をまとめました。心移植のドナー不足と左室補助デバイス治療の転帰は進歩していますが、重症心不全に対する左室補助デバイスによるDT(destination therapy)は心移植の代替治療となるかという疑問は明確ではありません。左室補助デバイスによるDTは重症心不全において、心移植待機戦略と同等の生存ベネフィットがあるかどうかを調べるために、2010年から2014年まで、アメリカにて、全国臓器移植登録ネットワーク(United Network for Organ Sharing registry)の心移植のデータ、機械的循環補助登録(Interagency Registry for Mechanically Assisted Circulatory Support)の左室補助デバイス埋め込みのデータ、後ろ向き傾向調整コホート解析を実施しました。左室補助デバイスDT3411例を解析、5年生存率をCox比例ハザードモデルを用いて解析しました。結果、8281例、アルブミン値、クレアチニン値、BMI、傾向スコアマッチング後、左室補助デバイスDT群3411例は、心移植待機群3411例と比べて、やや高齢(64.0 vs 60.0 P<0.001)で、性差(男性79.2% vs 男性77.6% P=0.13)は認めませんでした。 年齢、性別、BMI、腎機能、アルブミン値の傾向スコアマッチン後、心移植待機群3411例、橋渡し左室補助デバイス埋め込みを受けた1607例、左室補助デバイスなしの1804例を含みます。キーとなる臨床因子調整後、心移植待機戦略は、左室補助デバイスDTと比べて、5年生存率の高さと関連(RR 0.42 95%CI 0.38-0.46)を認めました。生存アドバンテージは心移植と関連(移植に至る期間調整後RR 0.27 95%CI 0.24-0.32)を認めました。臨床因子調整後、左室補助デバイスの橋渡しの有無に関わらず、心移植は、左室補助デバイスDTと比べて、5年生存率が優れていました。左室補助デバイスの技術の向上、前向き比較試験によって、 修正されていく可能性があるだろうと論文ではまとめています。
https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/article-abstract/2764756
Destination therapyとは、重症心不全において、心移植までの橋渡し(bridge)ではなく、心不全の治療目的に左室補助デバイス等の機械的循環補助を使用することです。合併症、安全性、コスト、様々な面においてどちらが優れているかは一概には言えませんが、現時点では心移植と比較した場合に心移植の代替治療としては劣るという報告です。論文の考察にも書かれている通り、今後、デバイス技術の発展、改良により変わって来る可能性はあります。


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