2020/3/21(土)、左室駆出率と死亡率との関係を調べた研究「Routinely reported ejection fraction and mortality in clinical practice: where does the nadir of risk lie?」の結果をまとめました。

2020/3/21(土)、左室駆出率と死亡率との関係を調べた研究「Routinely reported ejection fraction and mortality in clinical practice: where does the nadir of risk lie?」の結果をまとめました。左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)と死亡率との関係について大規模コホート試験を実施しました。1998年から2018年まで、アメリカ地域ヘルスケアシステムの電子カルテ記録を用いて、203135例の心エコーデータ403977件から左室駆出率のデータと全死亡率との関連を調べました。Cox比例ハザード回帰分析にて、年齢、性別、関連基礎疾患等を調整しました。ニュージランドの35976例、心エコー45531件のデータセットを検証解析に使いました。アメリカのコホートの追跡期間の間に、108578件(27%)の心エコー、36258例(23%)が死亡しました。全体で、死亡率の調整後ハザード比は、左室駆出率とU字状の関係(u-shaped relationship)を認めました。左室駆出率60-65%を基準とした場合に、左室駆出率70%以上で調整後HR 1.71(95%CI 1.64–1.77)、左室駆出率35-40%で調整後HR 1.73(95%CI 1.66–1.80)でした。各年代、各背別においても同様の関係が検証データセットにおいても認められました。左室駆出率が上昇している例において、僧帽弁逆流症、壁厚肥厚、貧血等の併存疾患の補正後、心エコーにて心不全を認めた例に限定しても、同様の結果でした。左室駆出率60-65%の範囲から外れること(Deviation)は、年齢、性別、心不全等の他の併存疾患に関わらず、予後不良と関連を認めました。左室駆出率の正常基準の新しい認識につながるかも知れないと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://academic.oup.com/eurheartj/article/41/12/1249/5544337
左室駆出率は低過ぎても高過ぎても死亡率と関連するという興味深い報告です。左室駆出率が異常高値となる病態として、僧帽弁閉鎖不全症、貧血、甲状腺機能亢進症、カテコラミン使用中等の高拍出状態等がありますが、併存疾患補正後も関連を認めたとのことです。左室駆出率は50%または55%以上は正常と定義されていますが、60-65%がさらに正常の中の正常ということでしょうか。さらなる病態解析が気になります。


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