2020/4/1(水)、心筋梗塞の迅速除外のための新しいプロトコルについてのアメリカの研究「Association of a Novel Protocol for Rapid Exclusion of Myocardial Infarction With Resource Use in a US Safety Net Hospital」の結果をまとめました。

2020/4/1(水)、心筋梗塞の迅速除外のための新しいプロトコルについてのアメリカの研究「Association of a Novel Protocol for Rapid Exclusion of Myocardial Infarction With Resource Use in a US Safety Net Hospital」の結果をまとめました。救急外来における胸痛患者への高感度心筋トロポニンT(High-sensitivity cardiac troponin T: hs-cTnT)プロトコルは、必要以上の医療リソースを減らし、救急外来の混雑を減らすかも知れません。救急外来到着時、1時間後、3時間後の3回測定のトロポニン値と修正HEARTスコア(既往歴、心電図、年齢、危険因子)による新しい高感度心筋トロポニンTのプロトコルを実施することは、安全性を維持しつつ、リソースの消費を改善するかどうか調べるために、2017年から2018年まで、テキサス州ダラスの病院の大規模なセーフティネット「Parkland Health and Hospital System」にて、救急外来を受診し、心電図検査とトロポニン検査を行った41543例の後ろ向きコホート研究を実施しました。リソース消費のアウトカムは、救急外来滞在時間、トロポニン測定から帰宅判断までの時間(最初にトロポニンを測定してから入院治療、入院経過観察、帰宅かを判断するまでの時間)、最終的な転帰としました。安全性のアウトカムとして、心筋梗塞による再入院、死亡としました。結果、救急外来受診31543例、平均年齢54歳、女性14675例(48%)でした。救急外来滞在時間は、導入前の期間で月平均1.09分減少(95% CI, -2.81 to 0.64)であったのに対し、導入後は月4.69分(95% CI, -9.05 to -0.33)ヘと減少、有意差(P for interaction = .007)を認めました。トロポニン測定から帰宅判断までの時間は導入前は月1.72分増加(95% CI, 1.08 to 2.36)していましたが、導入後は増加の平均値は月0.37分(95% CI, -1.25 to 1.99)と緩やかとなり、有意差(P value for interaction = .007)を認めました。導入後は救急外来から帰宅となる比率が48%から53%へ増加し、有意差(P < .001)を認めました。30日間の主要有害事象の発生率は低く、導入の前後で変化はありませんでした。高感度心筋トロポニンTと修正HEARTスコアによる新しいプロトコルの導入は、救急外来滞在時間を減らし、トロポニン測定から帰宅判断までの時間の増加を抑えました。心筋梗塞の除外のための同様のプロトコルは、救急外来の混雑を減らし、安全性を担保しながら医療の質を向上させる可能性があるだろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32320036
胸痛患者の急性冠症候群のリスク層別化に提唱された「Modified HEART Score」に加えて、今回、高感度心筋トロポニンTを、救急外来到着時、救急外来到着時、1時間後、3時間後の3回測定するというプロトコルです。救急外来到着時にもうトロポニンを測定してしまうというアメリカ的な発想ですが、トロポニン陽性の場合は即治療開始の判断が出来て、良いと思います。救急外来の混雑緩和と安全性の担保といういかにも現実的な課題です。「Modified HEART Score」については下記論文をご覧ください。時間があればまとめるかも知れません。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28167641


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