2020/4/8、左室駆出率重度低下例において経皮的冠動脈形成術と冠動脈バイパス術の長期転帰を比較した研究「Long-term Outcomes in Patients With Severely Reduced Left Ventricular Ejection Fraction Undergoing Percutaneous Coronary Intervention vs Coronary Artery Bypass Grafting」の結果をまとめました。左室駆出率(left ventricular ejection fraction: LVEF)の重度低下例において、経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)、冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting: CABG)を行った予後を調べるために、血行再建術後の長期転帰を比較しました。2008年から2016年まで、カナダ、オンタリオにて、40歳から84歳、左前下行枝、左主幹部、多枝冠動脈病変で、左室駆出率35%未満の例に対し、PCIまたはCABGを行ったデータを対象に後ろ向きコホート研究を実施しました。除外基準として、手技合併症、過去の冠動脈バイパス術、転移性がん、透析、PCIとCABGを同日施行、24時間以内の心筋梗塞で緊急血行再建を行った例としました。PCIによる血行再建、CABGによる血行再建、一次転帰は全死亡としました。二次転帰は心血管疾患死、主要有害心血管事象(脳卒中、その後の血行再建、心筋梗塞、心不全入院と定義)、各症例の主要有害心血管事象としました。全12113例、平均年齢、PCI群64.8歳、CABG群65.6歳、男性PCI群72.5%、CABG群82.9%、ベースラインの30項目において傾向スコアマッチングを行いました。PCI群2397例、CABG群2397例、平均追跡期間5.2年間、結果、PCI群はCABG群に比べて、死亡率(HR, 1.6; 95% CI, 1.3-1.7)、心血管疾患死(HR 1.4, 95% CI, 1.1-1.6)、主要有害心血管事象(HR, 2.0; 95% CI, 1.9-2.2)、その後の血行再建(HR, 3.7; 95% CI, 3.2-4.3)、心筋梗塞入院(HR, 3.2; 95% CI, 2.6-3.8)、心不全入院(HR, 1.5; 95% CI, 1.3-1.6)と差を認めました。CABG群に比べて、PCI群で高い死亡率、高い主要有害心血管事象の発生率を認めました。治療方針の意思決定において示唆を提供するだろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32267465
PCIが良いかCABGが良いかの議論ですが、左室駆出率が重度低下(35%未満)の場合には、CABGのほうが予後が良好という結果でした。血行再建が必要で左室駆出率35%未満の場合にはCABGを第一選択として考慮する根拠となりそうです。左室駆出率が低下していない例に関しては、PCIもCABGも遜色ないという報告が大多数です。詳しくは主治医までご相談ください。
2020/4/8、左室駆出率重度低下例において経皮的冠動脈形成術と冠動脈バイパス術の長期転帰を比較した研究「Long-term Outcomes in Patients With Severely Reduced Left Ventricular Ejection Fraction Undergoing Percutaneous Coronary Intervention vs Coronary Artery Bypass Grafting」の結果をまとめました。