2020/7/16、虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作に対してチカグレロルとアスピリン併用かアスピリン単独か比較した研究「Ticagrelor and Aspirin or Aspirin Alone in Acute Ischemic Stroke or TIA」の結果をまとめました。

2020/7/16、虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作に対してチカグレロルとアスピリン併用かアスピリン単独か比較した研究「Ticagrelor and Aspirin or Aspirin Alone in Acute Ischemic Stroke or TIA」の結果をまとめました。虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作後の脳卒中の予防のために、チカグレロルとアスピリンの併用、アスピリン単独、どちらが良いか評価しました。過去の研究からは、脳卒中、一過性脳虚血発作後、血管事象、死亡を防ぐために、チカグレロルはアスピリンよりも優れていませんでした。チカグレロルとアスピリンの併用は脳卒中予防効果があるかどうかはわかっていませんでした。軽度から中程度の急性非心原性虚血性脳卒中、NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)5点以下または一過性脳虚血発作で、血栓溶解療法、血栓回収療法を行わない例を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を実施しました。症状発症から24時間後以内に、チカグレロル(180mgの付加投与、90mg 2Tの継続投与)とアスピリン(300mgから325mgを初日に、その後は75mgから100mgを継続)を30日間投与する群と、プラセボとアスピリンを投与する群に無作為に割り振りました。主要転帰は30日以内の脳卒中、死亡の複合としました。副次転帰は30日以内の虚血性脳卒中の再発、障害の発生としました。安全性の主要転帰は重症出血としました。結果、全11016例、チカグレロルとアスピリン併用群5523例、アスピリン単独群5493例、主要転帰事象は併用群303例(5.5%)、単独群362例(6.6%)で、有意差(hazard ratio, 0.83; 95% confidence interval [CI], 0.71 to 0.96; P=0.02)を認めました。虚血性脳卒中は併用群276例(5.0%)、単独群345例(6.3%)で、有意差(hazard ratio, 0.79; 95% CI, 0.68 to 0.93; P=0.004)を認めました。障害の発生は両群間で有意差を認めませんでした。重症出血は併用群28例(0.5%)、単独群7例(0.1%)で有意差(P=0.001)を認めました。NIHSS 5点以下の軽度から中程度の急性非心原性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作で、血栓溶解療法を行わない例において、30日以内の脳卒中、死亡の複合リスクは、チカグレロルとアスピリンの併用群は、アスピリン単独群と比べて減少しましたが、障害の発生は両群間において有意差を認めませんでした。重症出血はチカグレロル併用群で高頻度でした。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1916870
一過性脳虚血発作後、または脳梗塞急性期の再発予防において、アスピリン単独よりもアスピリンとチカグレロル併用のほうが21%再発が少なかったという報告です。重症出血は0.5%に発生しています。再発予防のベネフィットと出血のリスクは常にトレードオフです。詳しくは主治医にご相談ください。
同様の研究は、アスピリンとクロピドグレルの併用でも報告されています。「CHANCE Study」は当時は衝撃を受けました。詳しくは下記論文をご覧ください。
「Clopidogrel with aspirin in acute minor stroke or transient ischemic attack」
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23803136


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