2020/6/9、不整脈原性右室心筋症における心臓MRIの有用性について調べた研究「Prognostic Value of Magnetic Resonance Phenotype in Patients With Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy」の結果をまとめました。心臓MRI(Cardiac magnetic resonance: CMR)は、不整脈原性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy: ARVC)における組織異常、機能異常を評価するために広く使われています。近年、不整脈原性右室心筋症の心室性不整脈の重症度の5年リスクの予測のために、不整脈原性右室心筋症リスクスコアが提唱されました。しかし、線維化、脂肪浸潤、左室病変等の心臓MRIの所見の意義は十分にわかっていませんでした。不整脈原性右室心筋症の確定診断例において、心臓MRIの所見の予測因子としての役割、不整脈原性右室心筋症の5年リスクスコアの心臓事象の予測因子としての有効性を評価するために、不整脈原性右室心筋症の確定診断を受けた全140例、平均年齢42歳、女性97例、多施設前向き登録研究を実施しました。研究デザインとして、心臓MRIを全例に撮影、登録時の情報に基づいて不整脈原性右室心筋症の5年リスクスコアを後ろ向きに計算、中央値5年間の追跡、複合転帰として心臓突然死、埋込み型心臓除細動器(implantable cardioverter-defibrillator: ICD)の適応、心停止としました。心臓MRIの結果、14例(10%)は異常なし、右室病変58例(41%)、両室病変52例(37%)、左室有意16例(12%)を認めました。追跡期間中、転帰事象48例(34%)が発生しましたが、心臓MRI異常なしの例からは1件も発生しませんでした。カプランマイヤー解析では、左室病変、左室有意病変を認める例では、右室病変のみの例と比べて、予後不良で有意差(p < 0.0001)を認めました。多変量解析の結果、左室病変、左室有意病変、不整脈原性右室心筋症の5年リスクスコアは、転帰事象の独立した予測因子でした。推定5年リスクスコアは右室病変のみの例の観察リスク予測因子として使えそうですが、左室病変の例のリスクは過小評価しました。不整脈原性右室心筋症の心臓MRI所見の違いは予後の違いと関連していました。不整脈原性右室心筋症の5年リスクスコアは右室病変の例の評価には有用ですが、左室病変の例は過小評価する傾向にありました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32498802
不整脈原性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy: ARVC)は、右室心筋が進行性に脂肪組織に置き換わる原因不明の心疾患で、右心不全、心室頻拍、心室細動等の致死的不整脈、心臓突然死の原因となり、ハイリスク例では心臓突然死の予防のためには埋込み型除細動器が必要になります。薬物療法、カテーテルアブレーション等も選択肢になりますが、いつどのタイミングでICD埋込みを行うべきか適応について様々な予測因子が求められています。今回、心臓MRIの所見が有用であったとの報告です。逆に言えば、原因不明の心室性不整脈を認めた場合には心臓MRIを撮影する理由にもなるでしょう。詳しくは主治医までご相談ください。
2020/6/9、不整脈原性右室心筋症における心臓MRIの有用性について調べた研究「Prognostic Value of Magnetic Resonance Phenotype in Patients With Arrhythmogenic Right Ventricular Cardiomyopathy」の結果をまとめました。