2020/8/30、経皮的冠動脈形成術後のトリメタジジンの有効性と安全性について調べた研究「Efficacy and safety of trimetazidine after percutaneous coronary intervention (ATPCI): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial」の要旨をまとめました。

2020/8/30、経皮的冠動脈形成術後のトリメタジジンの有効性と安全性について調べた研究「Efficacy and safety of trimetazidine after percutaneous coronary intervention (ATPCI): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial」の要旨をまとめました。経皮的冠動脈形成術、抗狭心症薬によって血行再建が成功したにも関わらず、狭心症の症状が持続したり、再発したりすることがあります。さらに、安定例に対する経皮的冠動脈形成術は至適薬物療法と比べて生存率を改善しないことも示されています。トリメタジジン(Trimetazidine)は、抗狭心症薬(antianginal agent)で、虚血心筋のエネルギー代謝を改善し、経皮的冠動脈形成術後の転帰や症状を改善する可能性があります。本研究では、経皮的冠動脈形成術後、標準的なエビデンスベースの薬物療法に加えてトリメタジジンの長期の潜在的ベネフィット、安全性を評価するために、ヨーロッパ、南アメリカ、アジア、来たアフリカ、27カ国、365施設、経皮的冠動脈形成術成功後、標準治療にトリメタジジン追加の無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験を実施しました。組み込み基準は、21歳から85歳、安定狭心症に対する待機的経皮的冠動脈形成術または、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞に対する緊急経皮的冠動脈形成術を受けて、30日以内としました。経口トリメタジジン35mg1日2回かプラセボか、双方向性ウェブレスポンスシステムにて無作為化しました。被験者、試験者、全スタッフは治療選択をマスクされた状態で行いました。有効性の主要評価項目は心臓死、心イベント入院、狭心症再発または増悪、抗狭心症薬が追加、切り替え、増量が必要になった場合、冠動脈造影を必要とする狭心症の再発または増悪の複合としました。有効性解析は企画意図分析の原則に従い評価しました。安全性は試験薬を少なくとも1回以上内服した全例を評価しました。2014年から2016年まで、6007例が登録、トリメタジジン群2998例、プラセボ群3009例に無作為に割り付けました。中央値47.5ヶ月の追跡、主要評価項目の発生率はトリメタジジン群(700 [23·3%] patients)とプラセボ群(714 [23·7%]; hazard ratio 0·98 [95% CI 0·88–1·09], p=0·73)との間で有意差を認めませんでした。個別解析では、両群間に主要評価項目の個別項目で有意差を認めませんでした。待機的経皮的冠動脈形成術か緊急経皮的冠動脈形成術かで比較しても同様でした。トリメタジジン群1219例(40.9%)、プラセボ群1230例(41.1%)は重大治療関連有害事象が報告されました。関心となる有害事象の頻度は両群間で同程度でした。本研究から、経皮的冠動脈形成術成功後、至適薬物療法に加えて、経口トリメタジジン35mg1日2回を一律に追加することは狭心症の再発、転帰に影響を及ぼさないことがわかりました。実臨床においてトリメタジジンの位置づけを考える際の参考になるでしょう。今回の研究からはトリメタジジンの長期の処方においても何らかの安全性の懸念事項とは統計学的に関連は認められませんでした。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31790-6/fulltext
トリメタジジンは日本でも「バスタレルF錠」として承認されています。そう言えばあまり使ったことがありませんが、冠動脈拡張作用、心筋酸素需要減少作用、心筋代謝改善作用、副血行路形成促進作用、抗血小板作用などが報告されています。
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00067270.pdf


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