2020/7/28、トロポニンと冠動脈石灰化の測定による動脈硬化性心血管疾患リスク層別化について調べた研究「Atherosclerotic Cardiovascular Disease Risk Stratification Based on Measurements of Troponin and Coronary Artery Calcium」の要旨をまとめました。高感度心筋トロポニン(high-sensitivity cardiac troponin: hs-cTn)低値、冠動脈石灰化スコア(coronary artery calcium scores: CAC scores)ゼロは、動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease: ASCVD)のリスク低値と関連しています。ベースラインの高感度心筋トロポニンと冠動脈石灰化が動脈硬化性心血管疾患に与える影響を評価するために、「prospective MESA」(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)研究の参加者、臨床的に心血管疾患を認めない45歳から84歳まで、検出上限値3ng/lの高感度心筋トロポニンと冠動脈石灰化測定と動脈硬化性心血管疾患との関係を解析しました。6749例、中央値15年間の追跡期間中、動脈硬化性心血管疾患1002例が発生しました。検出可能な冠動脈石灰化(
20.1 vs. 5.0 events per 1,000 person-years; adjusted hazard ratio [HR]: 2.35; 95% confidence interval [CI]: 2.0 to 2.76; p < 0.001)、検出可能な高感度心筋トロポニンT(15.4 vs. 5.2 per 1,000 person-years; adjusted HR: 1.47; 95% CI: 1.21 to 1.77; p < 0.001)は、検出されなかった場合と比べて動脈硬化性心血管疾患の高い発生率を認めました。高感度心筋トロポニンTが検出されなかった群32%では、冠動脈石灰化スコアゼロである50%と動脈硬化性心血管疾患リスクは同程度(5.2 vs. 5.0 per 1,000 person-years)でした。高感度心筋トロポニンT、冠動脈石灰化の2つと、動脈硬化性心血管疾患の発生率は以下の通りで、高感度心筋トロポニンT検出感度未満かつ冠動脈石灰化スコアゼロ(2.8 per 1,000 person-years)を基準とした場合、高感度心筋トロポニンT検出感度以上かつ冠動脈石灰化スコアゼロ(6.8 per 1,000 person-years HR: 1.59; 95% CI: 1.17 to 2.16; p = 0.003)、高感度心筋トロポニンT検出感度未満かつ冠動脈石灰化スコア0超(11.1 per 1,000 person-years HR: 2.74; 95% CI: 1.96 to 3.83; p < 0.00001)、高感度心筋トロポニンT検出感度以上かつ冠動脈石灰化スコア0超(22.6 per 1,000 person-years HR: 3.50; 95% CI: 2.60 to 4.70; p < 0.00001)となりました。高感度心筋トロポニンTが検出されないことは、動脈硬化性心血管疾患リスクとして、冠動脈石灰化スコアゼロと同程度に相当しました。相反する結果でリスクが高い場合はリスク予測因子として総合的な判断が必要です。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32703505
高感度心筋トロポニン、冠動脈石灰化スコアはいずれも冠動脈疾患の予測因子になります。お茶の水循環器内科の方針としては、両方陽性の場合は勿論のこと、どちらかが陽性であれば冠動脈精査の対象としています。両方陰性の場合はさすがに冠動脈疾患は否定的であると判断しています。あるいは冠動脈CTであれば確実に冠動脈狭窄の有無を評価可能なので、必要があれば必ずわかります。今年春以降、高度な冠動脈狭窄が危険な状態で何例も見付かっています。我慢せずにまずはお茶の水循環器内科までご相談ください。
2020/7/28、トロポニンと冠動脈石灰化の測定による動脈硬化性心血管疾患リスク層別化について調べた研究「Atherosclerotic Cardiovascular Disease Risk Stratification Based on Measurements of Troponin and Coronary Artery Calcium」の要旨をまとめました。