2020/8/29、高齢の非ST上昇型心筋梗塞に対して侵襲的治療と保存的管理を比較したイギリスの研究「Invasive versus non-invasive management of older patients with non-ST elevation myocardial infarction (SENIOR-NSTEMI): a cohort study based on routine clinical data」の要旨をまとめました。

2020/8/29、高齢の非ST上昇型心筋梗塞に対して侵襲的治療と保存的管理を比較したイギリスの研究「Invasive versus non-invasive management of older patients with non-ST elevation myocardial infarction (SENIOR-NSTEMI): a cohort study based on routine clinical data」の要旨をまとめました。過去の研究からは、非ST上昇型心筋梗塞(non-ST elevation myocardial infarction: NSTEMI)の長期死亡率は非侵襲的管理よりも侵襲的治療のほうが低いことが示唆されていますが、超高齢者は試験対象から除外されていました。80歳以上の非ST上昇型心筋梗塞において、侵襲的治療と非侵襲的管理とで、ピークトロポニン濃度から3日以内の生存率に与える影響を調べるために、イギリス、「NIHR Biomedical Research Centres」、5つの三次救急病院にて観察研究を実施しました。組み込み基準は、2010年から2017年まで、80歳以上、トロポニン測定を実施、非ST上昇型心筋梗塞と診断された例としました。治療前の変数に基づいて傾向スコア(侵襲的治療の可能性の推算)をロジスティック回帰を用いて算出、侵襲的、非侵襲的の可能性が高い例は除外されました。トロポニンピーク濃度から3日以内の侵襲的治療の死亡例は、無イベント時間バイアスを減らすために、傾向スコアに基づいて侵襲的治療群または非侵襲的管理群に割り振りました。侵襲的治療群、非侵襲的管理群の死亡率のハザード比、心不全入院の発生率を比較しました。結果、非ST上昇型心筋梗塞1976例、トロポニンピーク濃度から3日以内の死亡101例、傾向スコア範囲外を理由に375例が除外されました。解析対象1500例、中央値年齢86歳(四分位範囲82-89歳)、非侵襲的管理845例(56%)でした。中央値3.0年間の追跡期間の間、613例(41%)が死亡、調整後累積5年死亡率は、侵襲的治療群36%、非侵襲的管理群55%、調整ハザード比32%低下(adjusted hazard ratio 0·68, 95% CI 0·55-0·84)を認めました。侵襲的治療は心不全入院の発生率の低値(adjusted rate ratio compared with non-invasive management 0·67, 95% CI 0·48-0·93)とも関連を認めました。80歳以上の非ST上昇型心筋梗塞において、侵襲的治療は非侵襲的管理と比べて生存率への有益性は認められました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32861307
80歳以上、年齢中央値86歳に対する冠動脈カテーテル治療の有用性について、冠動脈カテーテル治療を実施したほうが死亡率32%減少、心不全入院33%減少と有益であったという報告です。高齢であると冠動脈カテーテル治療を選択しない場合もしばしばありえるですが、治療が可能であれば治療をしたほうが良いという結果です。メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0908531615


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