2020/9/4、中程度から重度の睡眠時無呼吸症候群に対して上気道手術、従来管理の無呼吸低呼吸指数、日中の眠気への効果を調べた研究「Effect of Multilevel Upper Airway Surgery vs Medical Management on the Apnea-Hypopnea Index and Patient-Reported Daytime Sleepiness Among Patients With Moderate or Severe Obstructive Sleep Apnea The SAMS Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea: OSA)では、デバイス治療が不適切か、未治療のことが多いです。閉塞性睡眠時無呼吸で従来のデバイス治療が上手くいかなかった例を対象に、上気道拡大、安定のための硬口蓋手術、舌手術の組み合わせの治療効果を検討するために、上気道手術、現行の内科管理を比較する多施設並行群オープンラベル無作為化臨床試験を実施しました。2014年から2017年まで、中程度から重度の症候性閉塞性睡眠時無呼吸で、従来治療が失敗した例を対象に、2018年まで追跡しました。介入群では、修正型口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(modified uvulopalatopharyngoplasty)、低侵襲舌根減量術(minimally invasive tongue volume reduction)51例、睡眠姿勢へのアドバイス、減量等の現行の治療管理群51例、主要評価項目は、無呼吸低呼吸指数(apnea-hypopnea index: AHI)、1時間あたりの無呼吸または低呼吸の回数で、15以上30以下は中程度、30超は重症と示唆、エプワース睡眠尺度(Epworth Sleepiness Scale: ESS)、0から24、10超は病的睡眠を示唆、としました。6ヶ月後時点における両群間の開始時からの調整群間差を評価しました。臨床的に意義のある差の最小値は無呼吸低呼吸指数で1時間あたり15回、エプワース睡眠尺度で2単位以上と定義しました。結果、102例、平均年齢44.6歳、女性18例(18%)、無作為化、91例(89%)は試験完了しました。無呼吸低呼吸指数は、開始時は手術群で47.9、従来管理群で45.3、6ヶ月後は手術群で20.8、従来管理群で34.5、有意差(mean baseline-adjusted between-group difference at 6 mo, −17.6 events/h [95% CI, −26.8 to −8.4]; P < .001)を認めました。エプワース睡眠尺度は、開始時は手術群で12.4、従来管理群で11.1、6ヶ月後は手術群で5.3、従来管理群で10.5、有意差(mean baseline-adjusted between-group difference at 6 mo, −6.7 [95% CI, −8.2 to −5.2]; P < .001)を認めました。手術群の2例(4%)で重大有害事象が発生、術後5日に心筋梗塞1例、術後陳旧性の出血で経過観察入院1例でした。今回の探索的研究から、中程度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸で、従来治療失敗例において、硬口蓋、舌手術の組み合わせは、従来治療と比べて、6ヶ月後の無呼吸低呼吸イベント、自己報告睡眠尺度を改善しました。さらなる研究、大規模研究によって、閉塞性睡眠時無呼吸の治療として上気道手術の臨床上の有用性、長期効果、安全性を評価する必要があると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2770361
睡眠時無呼吸症候群と診断後、標準治療としてCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)の導入を行いますが、持続陽圧呼吸療法の導入が上手くいかなかったり、途中で継続が難しいという例はしばしばあります。マウスピース治療の選択肢もありますが、効果のほどは人それぞれなのが現状です。手術療法という選択肢もあるのですが、日本ではそこまで一般的ではありませんでした。このたび、手術療法で無呼吸低呼吸指数の有意な改善を認めたとのことで、手術療法は効果があるという報告です。中程度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸で、他に治療選択肢がない場合には検討しても良いかも知れません。詳しくは主治医とご相談ください。
2020/9/4、中程度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸に対して上気道手術、従来管理の無呼吸低呼吸指数、日中の眠気への効果を調べた研究「Effect of Multilevel Upper Airway Surgery vs Medical Management on the Apnea-Hypopnea Index and Patient-Reported Daytime Sleepiness Among Patients With Moderate or Severe Obstructive Sleep Apnea The SAMS Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。