2020/9/29、冠動脈ステント留置後の再狭窄の傾向と転帰について調べたアメリカの研究「Trends and Outcomes of Restenosis After Coronary Stent Implantation in the United States」の要旨をまとめました。アメリカにて、ステント内血栓症(in-stent restenosis: ISR)の負荷、有病率、最適な治療戦略のデータは十分ではありませんでした。アメリカにて、ステント内血栓症に対して経皮的冠動脈形成術を実施した後の院内転帰、治療戦略、臨床経過、最近の傾向を解析するために、2009年から2017年まで、「CathPCI」(Diagnostic Catheterization and Percutaneous Coronary Intervention)、「NCDR」(National Cardiovascular Data Registry)からのデータを収集、後ろ向き解析を実施しました。経皮的冠動脈形成術後、ステント内血栓症病変を同定、ステント内血栓症病変に対して経皮的冠動脈形成術を実施しました。対照群として院内転帰、傾向スコアマッチングを実施しました。経皮的冠動脈形成術5100394件、ステント内血栓症病変に対する経皮的冠動脈形成術は10.6%でした。ベアメタルステントのステント内血栓症は2009年の2.6%から2017年の0.9%へ有意に減少(p < 0.001)、薬剤漏出性ステントのステント内血栓症は2009年の5.4%から2017年の6.3%へ有意に増加(p < 0.001)を認めました。ステント内血栓症に対する経皮的冠動脈形成術は、非ST上昇型心筋梗塞(18.7% vs. 22.5%; p < 0.001)、ST上昇心筋梗塞(8.5% vs. 15.7%; p < 0.001)と、低頻度でした。傾向スコアマッチング集団、ステント内血栓症に対する経皮的冠動脈形成術と、非ステント内血栓症に対する経皮的冠動脈形成術で、院内合併症、在院日数に有意差を認めませんでした。ステント内血栓症は全ての経皮的冠動脈形成術のうち約10%を占めており、他のステント留置と治療は共通でした。ステント内血栓症の約25%は急性心筋梗塞として来院しました。ステント内血栓症に対する経皮的冠動脈形成術の院内転帰は非ステント内血栓症の経皮的冠動脈形成術と同等でした。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32972528
ステント内血栓症は冠動脈ステント留置後に一定頻度で起こる合併症です。お茶の水循環器内科においても、冠動脈ステント治療後の通院患者さんが増えて来ましたので、ステント内血栓症には注意深く見極めなければなりません。冠動脈ステント治療後に、定期的に心電図、採血、冠動脈CT等で冠動脈のフォローが必要なのはこのためです。ステント治療後も、胸部圧迫感、胸部絞扼感等、自覚症状がある場合は必ず放置せずに受診ください。
2020/9/29、冠動脈ステント留置後の再狭窄の傾向と転帰について調べたアメリカの研究「Trends and Outcomes of Restenosis After Coronary Stent Implantation in the United States」の要旨をまとめました。