2020/9/15、多枝病変のST上昇型心筋梗塞で非責任病変の重症度と血行再建の転帰を調べた研究「Nonculprit Lesion Severity and Outcome of Revascularization in Patients With STEMI and Multivessel Coronary Disease」の要旨をまとめました。

2020/9/15、多枝病変のST上昇型心筋梗塞で非責任病変の重症度と血行再建の転帰を調べた研究「Nonculprit Lesion Severity and Outcome of Revascularization in Patients With STEMI and Multivessel Coronary Disease」の要旨をまとめました。「COMPLETE」(Complete vs Culprit-only Revascularization to Treat Multi-vessel Disease After Early PCI for STEMI)試験では、ST上昇型心筋梗塞、多枝冠動脈疾患に対して、血管造影ガイド下経皮的冠動脈形成術にて、非責任病変も含む完全な血行再建を行うことで、大心血管事象は減少しました。非責任病変の狭窄の重症度を冠動脈造影によって定量的に測定することは、完全血行再建に対してどのような影響を及ぼすのか調べるために、「COMPLETE」試験、4041例、冠動脈造影専門室にて、3851例、非責任病変狭窄重症度を定量的冠動脈造影にて測定、5355ヶ所の非責任病変を対象に、事前設定解析にて、治療の有効性は、定量的冠動脈造影にて60%以上の狭窄または60%未満の狭窄、一次主要評価項目として心血管死亡、新規の心筋梗塞、副次評価項目として心血管死亡、新規の心筋梗塞、虚血を誘引とする再血行再建としました。結果、一次主要評価項目は、定量的冠動脈造影にて狭窄60%以上の群2479例において、完全血行再建によって減少(2.5%/year vs. 4.2%/year; hazard ratio [HR]: 0.61; 95% confidence interval [CI]: 0.47 to 0.79)、一方で、定量的冠動脈造影にて狭窄60%未満の群1372例において(3.0%/year vs. 2.9%/year; HR: 1.04; 95% CI: 0.72 to 1.50; interaction p = 0.02)はそうではありませんでした。副次評価項目は、定量的冠動脈造影にて狭窄60%以上の群にて減少(2.9%/year vs. 6.9%/year; HR: 0.43; 95% CI: 0.34 to 0.54)、定量的冠動脈造影にて狭窄60%未満の群では(3.3%/year vs. 5.2%/year; HR: 0.65; 95% CI: 0.47 to 0.89; interaction p = 0.04)でした。ST部分上昇心筋梗塞、多枝冠動脈疾患において、定量的冠動脈造影によって測定、狭窄重症度60%以上の場合は、60%未満の場合と比べて、完全血行再建は大心血管転帰を有意に減少させました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32912441
経皮的冠動脈形成術において、責任病変以外にも冠動脈狭窄を認める場合、非責任病変も含む完全血行再建を行ったほうが良いということですが、非責任病変の血行再建の適応として狭窄率60%以上か60%未満かが一つの参考になるという報告です。実際には、狭窄率の数値だけではなく、冠血流予備量比、心筋シンチグラフィ、造影心臓MRI、臨床症状の変化等で、総合的に判断する場合が多いです。詳しくは主治医までご相談ください。


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