2020/9/13、冠動脈病変の安定性が突然の心停止後の緊急経皮的冠動脈形成術のベネフィットへ与える影響について調べた研究「Impact of Coronary Lesion Stability on the Benefit of Emergent Percutaneous Coronary Intervention After Sudden Cardiac Arrest」の要旨をまとめました。

2020/9/13、冠動脈病変の安定性が突然の心停止後の緊急経皮的冠動脈形成術のベネフィットへ与える影響について調べた研究「Impact of Coronary Lesion Stability on the Benefit of Emergent Percutaneous Coronary Intervention After Sudden Cardiac Arrest」の要旨をまとめました。突然の心停止後、特にST部分上昇を認めない場合における、緊急冠動脈造影、経皮的冠動脈形成術のベネフィットについては相反するデータがあります。病変が安定か不安定かによって、経皮的冠動脈形成術のベネフィットは影響を受けるのではないかと仮説を立てました。2011年から2014年、パリとパリ郊外の突然心停止の全670万例の前向きレジストリからデータを収集、緊急経皮的冠動脈形成術を受けた例を組み込みました。経皮的冠動脈形成術の判断は各チームの裁量に寄りました。緊急経皮的冠動脈形成術、生存退院率、病変が冠動脈造影上、安定か不安定か、不安定冠動脈病変の予測因子を評価しました。結果、突然の心停止9265例、緊急冠動脈造影1078例、平均年齢59.6歳、男性78.3%、464例(42.9.5%)に不安定病変を認め、253例(23.5%)は安定病変を認め、362例(33.6%)は有意な冠動脈病変を認めませんでした。緊急経皮的冠動脈形成術は478例、不安定病変91.4%、安定病変21.7%に実施されました。退院時、不安定病変に対する経皮的冠動脈形成術は、不安定病変で治療を受けなかった場合と比べて、2倍近くの生存率の有意な高さ(47.9% versus 25.6%, P=0.013)を認めましたが、安定病変に対する経皮的冠動脈形成術は生存率を改善しません(25.5% versus 26.3%, P=1.00)でした。調整後、不安定病変に対する経皮的冠動脈形成術は生存率向上の独立した関連(odds ratio, 2.09 [95% CI, 1.42-3.09], P<0.001)、一方で、安定病変に対する経皮的冠動脈形成術は生存率と関連(odds ratio, 0.92 [95% CI. 0.44-1.87], P=0.824)を認めませんでした。狭心症、当初ショック適応リズム、ST部分上昇、既知の冠動脈疾患がないこと、は不安定病変の独立した予測因子でした。不安定病変に対する緊急経皮的冠動脈形成術は突然心停止後の生存率改善と関連していましたが、対照的に、安定病変に対する経皮的冠動脈形成術はそうではありませんでした。したがって、不安定病変を持つ例に限っては早期の経皮的冠動脈形成術を実施するべきでしょう。胸痛、ST上昇、冠動脈疾患の既往のないこと、当初ショック適応リズム、4因子は緊急冠動脈造影のベネフィットがある不安定病変の同定に役立つかも知れません。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32895006
突然の心停止において心肺蘇生の実施とともに、心停止の原因として虚血が原因の場合は虚血の解除が最も重要です。不安定冠動脈病変を認める例においては早期の冠動脈造影、経皮的冠動脈形成術の実施によって、生存退院率が25.6%→47.9%に向上、一方で、虚血が原因ではなかった心停止においては緊急の冠動脈造影、経皮的冠動脈形成術は予後を改善しなかったという報告です。当たり前と言えば当たり前ですが、心停止の原因として虚血性か非虚血性かの見極めが重要ということでしょう。


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