2020/10/1、特発性冠動脈解離の治療パターン、転帰についての日本の研究「Treatment pattern and outcome of spontaneous coronary artery dissection in Japan」の要旨をまとめました。特発性冠動脈解離(spontaneous coronary artery dissection: SCAD)の特徴、治療パターン、転帰は、特に非西洋国において十分に研究されていませんでした。日本のおける全国登録データベースを使用、2012年から2017年、心筋梗塞の診断で冠動脈造影を実施した全例を対象に、国際疾病分類第10版を使用、特発性冠動脈解離の同定、手技関連の医原性の冠動脈解離は除外しました。特発性冠動脈解離とそれ以外の例の特徴、治療パターン、院内死亡率を比較しました。院内死亡率の解析のために、年齢調整、傾向スコア一致、ペアコホートを作成しました。結果、女性、心筋梗塞68909例のうち、特発性冠動脈解離322例(0.5%)でした。特発性冠動脈解離は非特発性冠動脈解離と比べて、若年(mean ± SD: 52.8 ± 13.5 years vs. 75.2 ± 11.4 years, P < 0.001)、併存疾患が少ない傾向にありました。経皮的冠動脈形成術は特発性冠動脈解離にて低い頻度(54.3% vs. 84.0%, P < 0.001)でした。特発性冠動脈解離で経皮的冠動脈形成術を受けた例において、ステント留置の実施は61.7%でした。院内死亡率は特発性冠動脈解離は、非特発性冠動脈解離と比べて有意に低値(2.5% vs. 7.6%, P = 0.001)、年齢調整後(2.5% vs. 7.5%, P = 0.001)、傾向スコア一致コホート(2.6% vs. 6.5%, P = 0.033)においても一貫していました。日本において、特発性冠動脈解離の院内死亡率は非特発性冠動脈解離と比べて低値、他の国際研究と比べても低値でした。しかしながら、特発性冠動脈解離の半数以上は経皮的冠動脈形成術を受けていました。特発性冠動脈解離の至適な管理法を明らかにするために、さらなる研究が必要です。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32360646
特発性冠動脈解離は女性に多く、頻度は0.5%程度、比較的若年で、院内死亡率は2.5%との日本の報告です。特発性冠動脈解離はそこまで頻度は高くありませんが、200例に1例という頻度なので、冠動脈カテーテル件数が多いところでは年に何例か遭遇するという頻度です。
2020/10/1、特発性冠動脈解離の治療パターン、転帰についての日本の研究「Treatment pattern and outcome of spontaneous coronary artery dissection in Japan」の要旨をまとめました。