2020/10/28、ホルモン補充療法と乳がんリスクの関係について調べた研究「Use of hormone replacement therapy and risk of breast cancer: nested case-control studies using the QResearch and CPRD databases」の要旨をまとめました。

2020/10/28、ホルモン補充療法と乳がんリスクの関係について調べた研究「Use of hormone replacement therapy and risk of breast cancer: nested case-control studies using the QResearch and CPRD databases」の要旨をまとめました。ホルモン補充療法(hormone replacement therapy: HRT)の種類、期間と乳癌リスクとの関係を調べるために、2段階ネスト症例対象研究を実施しました。イギリス、「QResearch」「Clinical Practice Research Datalink」のデータベースから、入院、死亡、社会的貧困、癌登録のデータを収集しました。1998年から2018年、50歳から79歳、乳癌の一次診断を受けた女性98611例、年齢、因子一致の女性457498例を対照群としました。主要評価項目は乳癌の診断、死亡率、入院、癌登録記録としました。ホルモン補充療法の種類に対するオッズ比を、個人特性、喫煙状況、アルコール摂取、併存疾患、家族歴、他の処方薬等の調整後、算出しました。2つのデータベース、「QResearch」「Clinical Practice Research Datalink」からの結果を結合しました。結果、全体で、乳癌の診断を受けた女性33703例(34%)、対照群134391例(31%)、登録の過去1年前までホルモン補充療法を受けていました。ホルモン補充療法を一度も受けていない群と比べて、5年未満の最近の使用、5年以上の長期の使用、エストロゲン単独療法、エストロゲンとプロゲステロンの併用療法は、乳癌リスク上昇、両方とも関連(adjusted odds ratio 1.15 (95% confidence interval 1.09 to 1.21) and 1.79 (1.73 to 1.85), respectively)を認めました。プロゲステロンとの組み合わせは、ノルエチステロン(1.88, 1.79 to 1.99)、ジドロゲステロン(1.24, 1.03 to 1.48)においてリスク上昇を認めました。過去のエストロゲン単独療法、過去5年未満の短期のエストロゲン・プロゲステロンの使用はリスク上昇と関連を認めませんでした。過去のエストロゲン・プロゲステロンの長期の使用は、リスク上昇(1.16, 1.11 to 1.21)を認めました。最近のエストロゲン単独使用は、女性10000人年あたり、若年女性3人年、高齢女性8人年、リスク上昇に相当しており、エストロゲン・プロゲステロンの使用は10000人年あたり、9人年から36人年に相当しました。過去のエストロゲン・プロゲステロン使用は、10000人年あたり、2人年から8人年に相当していました。本研究から、イギリス、ホルモン補充療法の種類、期間と乳癌リスク上昇の関係について、一般化可能な推算しました。リスクレベルはホルモン補充療法の種類、組み合わせ治療、長期期間の使用によってばらつきがありました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33115755
女性ホルモン補充療法と乳癌の関係について調べたイギリスからの報告です。ホルモン補充療法では最大79%乳癌リスクが上昇していました。安易に女性ホルモンの補充療法を奨める医療機関もあるようですが、乳癌リスクと天秤に掛けて意思決定する必要があります。


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