2021/11/13、糖尿病、経皮的冠動脈形成術後、心血管転帰に与えるLDLコレステロール低下の影響について調べた研究「Influence of LDL-Cholesterol Lowering on Cardiovascular Outcomes in Patients With Diabetes Mellitus Undergoing Coronary Revascularization」の要旨をまとめました。

2021/11/13、糖尿病、経皮的冠動脈形成術後、心血管転帰に与えるLDLコレステロール低下の影響について調べた研究「Influence of LDL-Cholesterol Lowering on Cardiovascular Outcomes in Patients With Diabetes Mellitus Undergoing Coronary Revascularization」の要旨をまとめました。LDLコレステロールの上昇は、特にハイリスク群において心血管事象の上昇と関連しています。2型糖尿病、確定的冠動脈心疾患において、経皮的冠動脈形成術または冠動脈バイパス術の冠動脈血行再建または至適薬物療法単独、LDLコレステロールの心疾患事象への影響を評価するために、3つの無作為化臨床試験の症例レベル蓄積解析を実施しました。2型糖尿病、無作為化後1年間におけるLDLコレステロール値によって分類しました。主要評価項目は主要有害心脳血管事象(major adverse cardiac or cerebrovascular events: MACCE)、全死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合としました。結果、全4050例、中央値3.9年間追跡しました。LDLコレステロール値100mg/dl以上の群は、LDLコレステロール値70から100mg/dl未満、LDLコレステロール値70mg/dl未満の群と比べて、主要心脳血管事象リスクの有意な上昇(17.2% vs. 13.3% vs. 13.1% for LDL-C between 70 and <100 mg/dl and LDL-C <70 mg/dl, respectively; p = 0.016)を認めました。至適薬物療法単独群と比べた場合、経皮的冠動脈形成術による主要有害心脳血管事象の減少は、LDLコレステロール値70mg/dl未満の場合においてのみ有意(hazard ratio: 0.61; 95% confidence interval: 0.40 to 0.91; p = 0.016)に認めましたが、一方で、冠動脈バイパス術は全てのLDLコレステロール値の分類において転帰改善と関連を認めました。LDLコレステロール値70mg/dl以上においては、冠動脈バイパス術は経皮的冠動脈形成術と比べて、主要有害心脳血管事象を有意に低下しました。2型糖尿病、冠動脈心疾患において、LDLコレステロール値の低下は経皮的冠動脈形成術においても冠動脈バイパス術においても主要有害心脳血管事象の長期転帰の改善と関連を認めました。至適薬物療法単独と比べた場合、経皮的冠動脈形成術はLDLコレステロール値70mg/dl未満の場合のみにおいて主要有害心脳血管事象の低下と関連を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33153578
糖尿病、脂質異常症、冠動脈疾患の血行再建において、冠動脈バイパス術は転帰が良好で、経皮的冠動脈形成術の場合にはLDLコレステロール値を70mg/dl未満にする必要があるとの報告です。経皮的冠動脈形成術後の場合は、どうせLDLを下げるのであればLDLコレステロール値70mg/dl未満が良いという結果です。お茶の水循環器内科では特に理由がない限り、LDLコレステロール値70mg/dl未満を目標とすることが多いです。または近年は糖尿病の有無だけで即冠動脈バイパス術の適応という時代ではありませんが、症例によっては経皮的冠動脈形成術ではなく冠動脈バイパス術の適応を考慮する選択肢もありであると言えるでしょう。お茶の水循環器内科では月1回心臓血管外科外来を行っています。冠動脈バイパス術の適応について詳しく知りたい方は一度ご相談ください。

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