2021/1/9、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の心血管、腎転帰について調べた研究「Cardiovascular and Renal Outcomes of Mineralocorticoid Receptor Antagonist Use in PARAGON-HF」の要旨をまとめました。

2021/1/9、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の心血管、腎転帰について調べた研究「Cardiovascular and Renal Outcomes of Mineralocorticoid Receptor Antagonist Use in PARAGON-HF」の要旨をまとめました。駆出率の保たれた心不全に対するミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、サクビトリル・バルサルタンの有効性、安全性を評価しました。現在のガイドラインでは、駆出率の保たれた心不全、選択例においてはミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の考慮が推奨されています。駆出率の保たれた心不全において、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬を背景として、心血管転帰、腎転帰、安全性について、サクビトリル・バルサルタンとバルサルタンを比較するために、駆出率の保たれた心不全4796例、サクビトリル・バルサルタンまたはバルサルタンに無作為化、「PARAGON-HF」(Prospective Comparison of ARNI [angiotensin receptor-neprilysin inhibitor] with ARB [angiotensin-receptor blockers] Global Outcomes in HF with Preserved Ejection Fraction)試験を実施しました。事前設定サブグループ解析、サクビトリル・バルサルタン、バルサルタンの影響は開始時のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使用、セミパラメトリック比例率法にて心不全入院、心血管死亡の複合、腎転帰はCox比例ハザード回帰モデルにて推算糸球体濾過量50%以上の低下、末期腎疾患、腎臓原因死亡の複合としました。推算糸球体濾過量の年次低下は反復測定混合影響モデルにて解析しました。主要安全性評価項目は低血圧、高カリウム血症、血清クレアチニンの事前定義閾値超えた上昇としました。結果、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬投与1239例(26%)はミネラルコルチコイド受容体拮抗薬非投与3557例(74%)と比べて、若年(72 vs. 73 years)、男性(52% vs. 47%)、左室駆出率低値(57% vs. 58%)、過去の心不全入院の既往ありの高率(59% vs. 44%)、有意差(all p < 0.001)を認めました。サクビトリル・バルサルタンはバルサルタンと比べて、主要心血管(for MRA users: rate ratio: 0.73; 95% confidence interval [CI]: 0.56 to 0.95; vs. for MRA nonusers: rate ratio: 0.94; 95% CI: 0.79 to 1.11; pinteraction = 0.11)、腎評価項目(for MRA users: hazard ratio: 0.31; 95% CI: 0.13 to 0.76; vs. for MRA non-users: HR: 0.59; 95% CI: 0.36 to 0.95; pinteraction = 0.21)への影響は、開始時のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使用の有無とは有意差を認めませんでした。低血圧、6.0 mmol/lの重症高カリウム血症の主要安全性評価項目の発生率は開始時のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の使用の有無によりませんでした。しかしながら、推算糸球体濾過量の年次低下率は、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬とサクビトリル・バルサルタンの併用において有意に低値(for MRA users: absolute difference favoring sacubitril/valsartan: +1.2 ml/min/1.73 m2 per year; 95% CI: 0.6 to 1.7; vs. for MRA nonusers: +0.4; 95% CI: 0.1 to 0.7; pinteraction = 0.01)を認めました。「PARAGON-HF was consistent in patients treated and not treated with MRA at baseline. A」における事前指定心臓腎臓複合評価項目に関してサクビトリル・バルサルタンのバルサルタンと比べた臨床的有効性は開始時のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の治療の有無によらず一貫していました。ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬に、サクビトリル・バルサルタンを追加することは、バルサルタン単独と比べて、重症高カリウム血症を増やすことなく、腎機能低下の減少と関連を認めました。本データは駆出率の保たれた心不全において、サクビトリル・バルサルタン、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の組み合わせ治療の追加価値の可能性を支持するものです。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33189633
左室駆出率の保たれた心不全でミネラルコルチコイド受容体拮抗薬投与の例に対して、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬サクビトリル・バルサルタン(エンレスト)の追加投与が腎機能低下抑制に効果的であったとの報告です。エンレストは2020/8/26に発売されたばかりの心不全治療薬です。2021年9月頃に中期処方解除の予定です。メディカルトリビューンでも記事になっていました。
https://medical-tribune.co.jp/news/2021/0125534929/index.html

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