2021/1/26、一過性脳虚血発作の発生率と脳梗塞の長期リスクとの関係について調べた研究「Incidence of Transient Ischemic Attack and Association With Long-term Risk of Stroke」の要旨をまとめました。

2021/1/26、一過性脳虚血発作の発生率と脳梗塞の長期リスクとの関係について調べた研究「Incidence of Transient Ischemic Attack and Association With Long-term Risk of Stroke」の要旨をまとめました。一過性脳虚血発作とその後の脳卒中リスクの関係を正確に推定することは、予防への取り組みの改善、集団における脳卒中負荷を最小化することに役立つ可能性があります。集団ベースの一過性脳虚血発作の発生率、一過性脳虚血発作後の脳卒中リスクの時期、長期傾向を明らかにするために、後ろ向きコホート研究「Framingham Heart Study」、1948年から2017年追跡、登録時に一過性脳虚血発作または脳卒中の既往のない14059例のデータを前向きに収集しました。
一過性脳虚血発作の既往のない集団、一過性脳虚血発作の初回発生の集団、年齢、性別を一致させました。一過性脳虚血発作の発生率、時間傾向解析、一過性脳虚血発作の有無と、主要評価項目として一過性脳虚血発作の発生率、一過性脳虚血発作後、短期間(7日、30日、90日)、長期(1年から10年)の脳卒中の発生率、一過性脳虚血発作後の脳卒中と一過性脳虚血発作の既往のない一致対照群の脳卒中、一過性脳虚血発作後90日間の脳卒中リスクの時間傾向を1954年から1985年、1986年から1999年、2000年から2017年の3期間に分けて評価しました。結果、14059例、66年間、366209人年の追跡期間中、一過性脳虚血発作435例発生、女性229例、平均年齢73.47歳、男性206例、平均年齢70.10歳、一過性脳虚血発作の既往のない一致対照群2175例と比較しました。一過性脳虚血発作の推定発生率は1000人年中1.19でした。一過性脳虚血発作後中央値8.86年の追跡期間中、脳卒中130例(29.5%)発生、一過性脳虚血発作から7日以内に28例(21.5%)発生、30日以内に40例(30.8%)発生、90日以内に51例(39.2%)発生、1年後以降63例(48.5%)発生、脳卒中発生の中央値時間は1.64年(interquartile range, 0.07-6.6)でした。435例あたり130例脳卒中、一過性脳虚血発作後、脳卒中発生の年齢性別調整後累積10年間ハザード0.46(95% CI, 0.39-0.55)、一過性脳虚血発作の既往のない一致対照群2175例あたり165脳卒中のハザード0.09(95% CI, 0.08-0.11)、完全調整後ハザード比4.37(95% CI, 3.30-5.71; P < .001)でした。一過性脳虚血発作後90日以内の脳卒中リスクは、1948年から1985年の16.7%(26 strokes among 155 patients with TIA)と比べて、1986年から1999年11.1%(18 strokes among 162 patients)、2000年から2017年5.9%(7 strokes among 118 patients)でした。最初の期間と比べて、90日間の脳卒中リスクのハザード比は第2期間0.60(95% CI, 0.33-1.12)、第3期間0.32(95% CI, 0.14-0.75)、有意差(P = .005 for trend)を認めました。1948年から2017年の住民ベースコホート研究において、一過性脳虚血発作の推定発生率は1000人年あたり1.19、一過性脳虚血発作後の脳卒中リスクは一過性脳虚血発作の既往のない一致対照群と比べて有意に高値、一過性脳虚血発作後の脳卒中リスクは1948年から1985年の期間と比べて、2000年から2017年の最新の期間は有意に減少を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2775447
一過性脳虚血発作は脳梗塞のリスク因子ですが、一過性脳虚血発作後どの程度のリスクになるのかフラミンガムハートスタディのデータから調べました。結果、一過性脳虚血発作後7日以内21.5%、30日以内30.8%、90日以内39.2%、1年以降48.5%とのことで、かなり幅がありますが、7日以内に発生している割合が20%を超えており、一過性脳虚血発作は救急疾患に準じて対応していなければならないことがわかります。具体的には、一過性脳虚血発作の原因として、非心原性が疑われる場合には抗血小板薬の投与開始、心房細動等の心原性の背景因子の精査、心原性が疑われる場合には抗凝固薬の投与開始、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の危険因子への介入等が需要です。積極的介入の効果あってか、一過性脳虚血発作後の脳卒中リスクは実際に32%へ減少していたとのアメリカからの報告です。

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