2021/1/19、急性虚血性脳卒中に対する機械的血栓除去療法の機能予後に与える影響を経静脈血栓溶解療法の有無で比較した研究「Effect of Mechanical Thrombectomy Without vs With Intravenous Thrombolysis on Functional Outcome Among Patients With Acute Ischemic Stroke The SKIP Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。

2021/1/19、急性虚血性脳卒中に対する機械的血栓除去療法の機能予後に与える影響を経静脈的血栓溶解療法の有無で比較した研究「Effect of Mechanical Thrombectomy Without vs With Intravenous Thrombolysis on Functional Outcome Among Patients With Acute Ischemic Stroke The SKIP Randomized Clinical Trial」の要旨をまとめました。急性大血管閉塞脳卒中において、機械的血栓除去療法を実施する場合に、経静脈的血栓溶解療法は必要かどうかは十分にわかっていません。脳卒中後転帰良好のために、機械的血栓除去療法に経静脈的血栓溶解療法の併用と比べて、機械的血栓除去療法単独は非劣勢か調べるために、2017年から2919年、日本、23病院ネットワーク、大血管閉塞による急性虚血性脳卒中204例を対象に、医師主導型多施設無作為化オープンラベル非劣性臨床試験を実施、2019年まで追跡しました。機械的血栓除去療法単独群101例、機械的血栓除去療法に加えてアルテプラーゼ0.6mg/kgの経静脈的血栓溶解療法併用群103例、無作為に割り振りました。有効性の主要評価項目は90日後のmRSスコア0から2によって定義された良好転帰、非劣性マージンオッズ比0.74、1側有意閾値0.025(97.5% CI)にて評価しました。有効性の副次評価項目として、90日後の死亡率を含む事前指定7項目を設定しました。安全性の評価項目として、36時間以内の全頭蓋内出血、症候性頭蓋内出血を含む4項目を設定しました。結果、204例、中央値年齢74歳、男性62.7%、NIHSSスコア中央値18点、全例試験完了しました。良好転帰は、機械的血栓除去療法単独群60例(59.4%)、機械的血栓除去療法に加えて経静脈的血栓溶解療法併用群59例(57.3%)、群間有意差なし(difference, 2.1% [1-sided 97.5% CI, −11.4% to ∞]; odds ratio, 1.09 [1-sided 97.5% CI, 0.63 to ∞]; P = .18 for noninferiority)でした。有効性の副次評価項目7項目、安全性の評価項目4項目においては10項目は有意差なし、90日死亡率(8 [7.9%] vs 9 [8.7%]; difference, –0.8% [95% CI, –9.5% to 7.8%]; odds ratio, 0.90 [95% CI, 0.33 to 2.43]; P > .99)でした。全頭蓋内出血は機械的血栓除去療法単独群は併用群と比べて有意に低下(34 [33.7%] vs 52 [50.5%]; difference, –16.8% [95% CI, –32.1% to –1.6%]; odds ratio, 0.50 [95% CI, 0.28 to 0.88]; P = .02)を認めました。症候性頭蓋内出血は群間有意差なし(6 [5.9%] vs 8 [7.7%]; difference, –1.8% [95% CI, –9.7% to 6.1%]; odds ratio, 0.75 [95% CI, 0.25 to 2.24]; P = .78)でした。急性大血管閉塞脳卒中において、機械的血栓除去療法単独は機械的血栓除去療法に加えて経静脈的血栓溶解療法併用と比べて、良好機能転帰に関して非劣性に達しませんでした。しかしながら、非劣性の結論に達しなかったのは、影響推算の信頼区間の広さによるものの可能性があります。詳しくは論文をご覧ください。
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2775278
急性の大血管閉塞による脳梗塞の急性期治療において、機械的血栓除去療法を行う場合に、経静脈的血栓溶解療法はやる意味があるのか、経静脈的血栓溶解療法はスキップ出来るのではないかという疑問に答えた「SKIP」試験の結果です。結果、有意な非劣性の証明には至らなかったという論文ですが、経静脈的血栓溶解療法併用群で頭蓋内出血は増加してしまっており、有効性にも差がないことから、経静脈的血栓溶解療法を行うことのメリットはあまりないように見えます。血管の位置、太さ、血小板血栓優位の血栓なのか、凝固血栓有意の血栓なのか、新鮮な血栓なのか、陳旧性の血栓なのか、様々な条件によって、溶けやすい血栓と溶けにくい血栓なのか、同じ脳梗塞でも違いがあるのでしょう。血栓溶解療法を行う価値、適応についてその場で個別に判断する必要があり、難しいところです。

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