厚生労働省から2017年の人口動態統計が発表されました。今回、日本人の死因に大きな動きがありました。
・第1位悪性新生物:37万3178人(27.8%)
・第2位心疾患:20万4203人(15.2%)
・第3位脳血管疾患:10万9844人(8.2%)
・第4位老衰:10万1787人(7.6%)
・第5位肺炎:9万6807人(7.2%)
第6位以降は、不慮の事故、腎不全、自殺、血管性及び詳細不明の認知症と続きます。悪性新生物は増加の一途であり、心疾患がそれに継ぐことは変わりないのですが、ここ最近は死因の第3位であった肺炎が第5位に、代わりに脳血管疾患が第3位になったこと、なんと老衰が第4位になったことに驚きました。理由としては、2017年1月から、ICD-10による原死因選択ルールの明確化において、「高齢者肺炎の死亡診断書の原死因として老衰と書いてもよいこと」と、統計の取り方が変わったことも影響はしていると考えらるとのことですが、やはり一番の原因は高齢化であり、老衰が4位という統計が日本の高齢化の現状を物語っていると感じました。詳しくは厚生労働省の報道発表資料をご覧ください。
→https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/index.html
→https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/gaikyou29.pdf
詳しく見ていくと、悪性新生物は様々な癌の総称なので内訳が大事で、男性では肺癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵癌の順に多く、女性では大腸癌、肺癌、膵癌、胃癌、乳癌、肝臓癌、子宮癌の順に多いです。癌は予防が困難なものも多いですが、喫煙による多くの肺癌、ピロリ菌感染による胃癌、肝炎ウイルス感染やアルコール性の肝硬変からの肝臓癌、ヒトパピローマウイルス感染による子宮頸癌など、一部の癌は予防可能であり、予防法が確立している癌は予防第一と言えるでしょう。しかしながら、多くの癌は予防法が確立していないものが多く、早期発見が重要になります。特に、大腸癌や乳癌など、治療技術の進歩により早期に発見出来れば予後が向上して来ているものもあります。以上をまとめると、予防法が確立している癌は予防第一、予防法が確立していない癌は早期発見を目指すこと、この2つに尽きると言えるでしょう。
癌が予防不可能なものが多いのに対して、心疾患も脳血管疾患も、心臓の血管、脳の血管の故障であり、血管疾患です。血管疾患に動脈硬化という共通の原因が既に特定されています。具体的には、動脈硬化の危険因子です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、運動不足です。加齢と家族歴、性別やストレス等も大きな危険因子ですが、自分の意志で修正困難ですので、修正可能な危険因子としては上記が重要です。これが、高血圧症、脂質異常症、糖尿病を放置してはいけない理由です。血管疾患は予防するには動脈硬化の危険因子を管理することが重要です。お茶の水循環器内科はこのために循環器に特化して診療を行っており、「世の中から救えるはずの病気をなくすこと」、これがお茶の水循環器内科のミッションです。
考察としては、人間は癌にもならずに、血管疾患にもならないで、自殺もしないで不慮の事故にも合わないとなると、多くは老衰で亡くなることになる訳ですが、これはある意味幸せなことなのかも知れません。寿命や天命という言い方も出来るかと思います。人間は必ず最後は亡くなります。人間の死亡率は100%です。死生観や価値観は人それぞれですので、医療者と言えども他人に押し付けることは出来ませんが、私個人としては、癌にもならないで、心筋梗塞にも脳卒中にもならないとすると、人間は老衰で寿命を迎えるのであると、ある意味それが一番理想なのかも知れないなと感じました。などと、疾病構造の変化から、お茶の水循環器内科のミッション、自分の死生観や価値観を考える機会となりました。自分の死生観や価値観については少しでも考えるきっかけになれば幸いです。
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