冠動脈CT検査の驚くべきエビデンスが発表されました。
今週号の「The New England Journal of Medicine」に、冠動脈CT検査の驚くべきエビデンスが発表されました。
「Coronary CT Angiography and 5-Year Risk of Myocardial Infarction」→https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1805971
冠動脈CTと5年間の心筋梗塞のリスクを調べた試験です。冠動脈CTとは、心臓の血管、冠動脈の狭窄の有無や程度を評価する検査です。スコットランドで行われた「SCOT-HEART」という臨床試験で、標準的治療に加えて冠動脈CTを行った群(2073名)と、標準的治療のみで冠動脈CTを行わなかった群(2073名)で、5年間の心筋梗塞の発症率に差があるかどうかを検討しました。結果、冠動脈CTを行わなかった群は3.9%が心筋梗塞を起こしたのに対し、冠動脈CTを行った群は2.3%と、有意に心筋梗塞が減少しました(hazard ratio, 0.59; 95% confidence interval, 0.41 to 0.84; P=0.004)。また、有意差はないものの、心筋梗塞や虚血性心疾患による死亡、脳卒中による死亡も減少傾向を認めました。詳しくは論文をご覧ください。
一つの介入で41%も心筋梗塞を減らせるというのは驚くべき結果です。さらに詳しく見ていくと、冠動脈CT撮影後、3ヶ月目あたりから早期に心筋梗塞の減少傾向を認めることから、冠動脈CTによって治療が必要な狭心症を早期に特定し、適切な介入が出来たこと、さらに、その後5年間に渡り長期に心筋梗塞の減少が継続していることから、冠動脈CTによって自分の冠動脈の動脈硬化の程度を知ることによって、服薬アドヒアランスから、食事、運動、禁煙、節酒等、生活習慣の改善の意識付けに役立ったのではないか、などと考察が出来るかと思います。当院では冠危険因子を認める場合には早期に積極的に冠動脈の評価を行っています。冠危険因子とは、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、大量飲酒、冠動脈疾患の家族歴、加齢等のことで、冠危険因子が多ければ多いほど心筋梗塞を起こしやすく、冠危険因子が少なければ少ないほど心筋梗塞を起こしやすいです。少しでも当てはまる場合には、冠動脈の評価が必要かどうか主治医までご相談ください。
お茶の水循環器内科院長の五十嵐健祐と申します。当院は2014年秋、「心血管疾患の一次予防」を理念に神田小川町にてスタートしました。2016年春、現在の神田神保町にお引越し、2018年春、「その医療は心筋梗塞を減らすだろうか?」という行動規範のもと、循環器専門の医療機関に生まれ変わりました。我々の使命は「世の中から救えるはずの病気をなくすこと」です。世の中には救える病気とそうでない病気があります。その中で、心筋梗塞と脳卒中は血管の故障が原因であり、心血管疾患の危険因子をコントロールすることで予防が可能です。具体的に、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、心房細動、慢性腎臓病等の心血管疾患の危険因子に対して適切な治療介入と治療継続をすることが重要で、そのために夜間や土日も診療をオープンにしています。心筋梗塞と脳卒中を防ぎ、「世の中から救えるはずの病気をなくすこと」、これが我々の使命です。お茶の水循環器内科をどうぞよろしくお願いいたします。
2018年4月1日、お茶の水循環器内科院長五十嵐健祐
【具体的な診療範囲】
お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。循環器内科とは心臓と血管を専門に診る診療科です。具体的には、狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患、抗血小板療法、抗凝固療法、心房細動を始めとする不整脈、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病、慢性心不全などの循環器疾患です。循環器の診療範囲を具体的にまとめました。
・心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、他)
・不整脈(心房細動、房室ブロック、上室期外収縮、心室期外収縮、他)
・脳卒中、脳血管障害、脳梗塞(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症)、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、脳卒中後の管理、二次予防、再発予防
・その他、健診の再検査、食事指導、運動指導、禁煙外来、など
以上、心臓と血管を専門に診る診療科が循環器内科です。脳梗塞や脳出血等の脳血管障害、脳卒中は脳神経内科や脳神経外科が診ることも多いですが、どちらも血管の故障の予防という意味では一次予防、二次予防としてやるべきことは循環器と共通です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病等の生活習慣病も循環器病のリスク因子という点で循環器内科の守備範囲です。心筋梗塞や脳卒中にならないようにする、なってしまっても再発しないようにする、というのが循環器内科の仕事です。予防に勝る治療はありません。お気軽に主治医までご相談ください。