「INTERHEART研究」と心筋梗塞を防ぐための9つの修正可能な危険因子についてまとめました。

「INTERHEART研究」と心筋梗塞を防ぐための9つの修正可能な危険因子についてまとめました。2002年、心筋梗塞を引き起こす冠危険因子について、修正可能な危険因子がどれくらい関与しているのかを調べた研究があります。

「Effect of potentially modifiable risk factors associated with myocardial infarction in 52 countries (the INTERHEART study): case-control study」→https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140673604170189/abstract

世界52カ国、262施設の多施設共同、症例群12461名、対照群14637例の極めて大規模な観察研究です。具体的には、人口統計的因子(出身国、第一言語)、社会経済因子(教育、職業、収入)、生活習慣(喫煙、運動、食事)、本人および家族歴、冠危険因子(喫煙、高血圧、糖尿病、ウエスト/ヒップ比、食事、身体活動、アルコール、アポリポ蛋白(Apo)、心理社会的因子)と心筋梗塞の新規発症について検討し、それぞれの危険因子のオッズ比(OR: Odds Ratios)と、人口寄与リスク(PAR: Population Attributable Risks、一般人口からその危険因子が除去された場合に何%その疾患を減少させるかという指標)を算出しました。結果、結果、脂質異常症、喫煙、心理社会的因子、腹部肥満、高血圧症、野菜果物不足、運動不足、糖尿病、飲酒の順で、心筋梗塞の発症に関与しているということがわかりました。なんと、驚くべきことに、心筋梗塞の90%は9つの修正可能な危険因子で起こるということがわかりました。上図では一部をわかりやすい表現に変えています。原文の表現とそれぞれのORとPARは以下の通りです。

・Smoking: OR 2·87, PAR 35·7%

・raised ApoB/ApoA1 ratio: OR 3·25, PAR 49·2%

・History of hypertension: OR 1·91, PAR 17·9%

・Diabetes: OR 2·37, PAR 9·9%

・Abdominal obesity: OR 1·12-1·62, PAR 20·1%

・Psychosocial factors OR 2·67, PAR 32·5%

・Daily consumption of fruits and vegetables: OR 0·70, PAR 13·7%

・Regular alcohol consumption OR 0·91, PAR 6·7%

・Regular physical activity OR 0·86, PAR 12·2%

Collectively, these nine risk factors accounted for 90% of the PAR in men and 94% in women.

いずれにせよ、修正不可能な危険因子としては、年齢、性別、家族歴がありますが、心筋梗塞の90%は9つの修正可能な危険因子で起こるということは非常に重要なポイントで、これらの9つの危険因子を可能な限り修正することで、心筋梗塞は十分に予防が可能ということです。脂質異常症、喫煙、心理社会的因子、腹部肥満、高血圧症、野菜果物不足、運動不足、糖尿病、飲酒、この9つの危険因子が増えれば増えるほど心筋梗塞になりやすく、少なければ少ないほど心筋梗塞になりにくいのです。心筋梗塞は修正可能な因子によって十分に防ぐことが出来るということが重要です。


【お茶の水循環器内科になりました】
お茶の水循環器内科院長の五十嵐健祐と申します。当院は2014年秋、「心血管疾患の一次予防」を理念に神田小川町にてスタートしました。2016年春、現在の神田神保町にお引越し、2018年春、「その医療は心筋梗塞を減らすだろうか?」という行動規範のもと、循環器専門の医療機関に生まれ変わりました。我々の使命は「世の中から救えるはずの病気をなくすこと」です。世の中には救える病気とそうでない病気があります。その中で、心筋梗塞と脳卒中は血管の故障が原因であり、心血管疾患の危険因子をコントロールすることで予防が可能です。具体的に、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、心房細動、慢性腎臓病等の心血管疾患の危険因子に対して適切な治療介入と治療継続をすることが重要で、そのために夜間や土日も診療をオープンにしています。心筋梗塞と脳卒中を防ぎ、「世の中から救えるはずの病気をなくすこと」、これが我々の使命です。お茶の水循環器内科をどうぞよろしくお願いいたします。
2018年4月1日、お茶の水循環器内科院長五十嵐健祐

【具体的な診療範囲】

お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。循環器内科とは心臓と血管を専門に診る診療科です。具体的には、狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患、抗血小板療法、抗凝固療法、心房細動を始めとする不整脈、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病、慢性心不全などの循環器疾患です。循環器の診療範囲を具体的にまとめました。
・冠動脈疾患(急性心筋梗塞、労作性狭心症、他)
・心筋梗塞後、ステント留置後の管理、抗血小板療法
・慢性心不全の管理
・心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、他)
・人工弁置換術後の管理、抗凝固療法
・心筋症(拡張型心筋症、肥大型心筋症、他)
・不整脈(心房細動、房室ブロック、上室期外収縮、心室期外収縮、他)
・心房細動の抗凝固療法、心原性脳塞栓症の予防
・脳卒中、脳血管障害、脳梗塞(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症)、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、脳卒中後の管理、二次予防、再発予防
・高血圧症、二次性高血圧症
・脂質異常症、家族性高コレステロール血症
・2型糖尿病、1型糖尿病、糖尿病合併症の管理
・慢性腎臓病
・その他、健診の再検査、食事指導、運動指導、禁煙外来、など
以上、心臓と血管を専門に診る診療科が循環器内科です。脳梗塞や脳出血等の脳血管障害、脳卒中は脳神経内科や脳神経外科が診ることも多いですが、どちらも血管の故障の予防という意味では一次予防、二次予防としてやるべきことは循環器と共通です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病等の生活習慣病も循環器病のリスク因子という点で循環器内科の守備範囲です。心筋梗塞や脳卒中にならないようにする、なってしまっても再発しないようにする、というのが循環器内科の仕事です。予防に勝る治療はありません。お気軽に主治医までご相談ください。

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