2019/11/6(水)、製薬会社から総合診療医へのギフトと処方の関係を調べたフランスの研究「Association between gifts from pharmaceutical companies to French general practitioners and their drug prescribing patterns in 2016: retrospective study using the French Transparency in Healthcare and National Health Data System databases」の結果をまとめました。多くの国で製薬会社や医療機器メーカーは医療従事者への金品の受け渡しを制限するルールがあり、フランスでは2013年から製薬会社や医療機器メーカーが医療従事者に一定の金額(10ユーロ)以上の贈り物をする場合は情報公開することが義務付けられました。フランスの透明性データベース(Transparency in Healthcare)の情報と医療保険請求データベース(National Health Data System)の情報を突合し、製薬会社から総合診療医(General practitioner: GP)のギフト(物品、飲食、招待、出張費、現金等)の金額と、ギフトを受け取った医師の処方パターンの関係について、フランスのGP 5万3763人のうち住所や処方内容を特定出来た4万1257人の医師を対象に、解析を行いました。結果、2016年にGPのうち2万7512人(66.7%)が10ユーロ以上のギフトを受け取っており、情報公開が義務付けられた2013年から2016年の3年間では87.8%の医師が10ユーロ以上に相当する何らかのギフトを受けとっていました。突合解析の結果、ギフトを受け取っていない医師はギフトを受け取っていた医師と比べて、年間の診察回数が最も少なく(4623回)、かかりつけ患者数(1006人)は最少、抗菌薬、降圧薬、スタチン等においてジェネリック医薬品を多く選ぶ傾向にありました。一方で、1000ユーロ以上のギフトを受け取った医師は、男性医師の比率(76.5%)が平均(64.5%)よりも高い傾向にあり、診療回数が最も多く(6140回)、かかりつけ患者数(1293人)は最多で、ベンゾジアゼピンの処方が多い傾向がありました。これらの結果から、製薬会社から総合診療医へのギフトの有無と金額は総合診療医の処方パターンに影響を与えていると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
→https://www.bmj.com/content/367/bmj.l6015
日本でも製薬会社のMR(medical representative)という職業があり、医療機関によっては盛んに情報提供活動のために出入りしています。お茶の水循環器内科では以前は一時期そのような状態もありましたが、2018年3月に「MR向けの面会規定」を策定して以降は必要以上に入り浸ることはなくなりました。
「MRさん向け面会規定を作りました。」→https://ochanomizunaika.com/5568
医薬品情報も医療機器情報も、今の時代は必要な情報はインターネットでいくらでも手に入るので、製薬会社の担当者のバイアスが掛かっていない中立的な情報のほうが大切です。業界ルールにより、製薬会社から情報提供出来る情報はより限定されてしまい、実臨床における使用感や使用経験等のリアルワールドの情報を知りたい場合には医師同士の学びのネットワークの重要性はさらに増していると感じています。または、薬の専門家である薬剤師に聞けば良いのです。いずれにせよ、バイアスが掛かっていない処方内容を常に心掛けたいものです。
2019/11/6(水)、製薬会社から総合診療医へのギフトと処方の関係を調べたフランスの研究「Association between gifts from pharmaceutical companies to French general practitioners and their drug prescribing patterns in 2016: retrospective study using the French Transparency in Healthcare and National Health Data System databases」の結果をまとめました。