2020/2/5(水)、降圧薬や脂質降下薬の処方開始と生活習慣の変化の関連性について検討した研究「Lifestyle Changes in Relation to Initiation of Antihypertensive and Lipid‐Lowering Medication: A Cohort Study」の結果をまとめました。心血管疾患の予防において、生活習慣の修正は薬物療法の介入と同程度かそれ以上に重要です。フィンランドにおいて、降圧薬、脂質降下薬(スタチン)の処方開始後の生活習慣の変化について検討しました。40歳以上、心血管疾患の既往がなく、2000年から2013年、4年に1回の調査のうち連続2回以上回答があった4万1225例を対象に、薬局の保険請求データ(pharmacy claims data)の情報から薬物療法開始群8837例、非開始群46021例に分類、BMI、身体活動、飲酒歴、喫煙歴等を解析しました。結果、薬物療法開始群は、非開始群と比較して、BMIは増加(変化差 0.19 95%CI 0.16–0.22)、身体活動は減少(−0.09 metabolic equivalent of task hour/day 95%CI −0.16 to −0.02)、肥満リスクは増加(OR 1.82 95%CI 1.63–2.03)を認めました。一方で、アルコール摂取量は減少(−1.85 g/week 95%CI −3.67 to −0.14)、喫煙率は低下(1回目の調査で喫煙者であったが2回目の調査で禁煙している場合のOR 0.74 95%CI 0.64–0.85)を認めました。降圧薬、脂質降下薬の開始は生活習慣に対して、好ましい変化と好ましくない変化、両方影響を与えていることがわかりました。体重管理と身体活動は薬物療法の開始後も個々に動機付けを行うべきである、と論文では結論付けています。詳しくは論文をご覧ください。
→https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.119.014168
生活習慣病に対して薬物療法を開始することの是非を検討した非常に興味深い視点の研究です。薬物療法開始後は、身体活動量が減ってしまい、BMIが増加する傾向があるとのことでしたが、降圧薬やスタチン自体にはそのような副作用はないので、薬物療法が開始されたことの安心感、薬を飲んでいるから真剣に運動をしなくても良いのではないかという考えなど、運動へのモチベーションが低下してしまっていることなどが考えられます。これは考え方の問題で十分に回避が可能で、薬物療法を開始した後も、生活習慣を改善し、薬を辞めていくことや薬を減らしていくことを一つのモチベーションにして上手くいっている場合も多いです。薬が出たからと言っても、食事や運動の改善をより積極的に行う人もいれば、食事や運動の改善を辞めてしまう人もおり、まさに人それぞれです。飲酒習慣と喫煙習慣が改善しているのは良い影響です。
2020/2/5(水)、降圧薬や脂質降下薬の処方開始と生活習慣の変化の関連性について検討した研究「Lifestyle Changes in Relation to Initiation of Antihypertensive and Lipid‐Lowering Medication: A Cohort Study」の結果をまとめました。