2020/2/19(水)、失神で救急部を受診した高齢者のリスク層別化スコアの有用性について調べた研究「Risk Stratification of Older Adults Who Present to the Emergency Department With Syncope: The FAINT Score」の結果をまとめました。高齢者の失神は救急部受診の理由として頻度は高いですが、中には予後の悪い心原性失神が隠れていることがあります。30日以内の重大な心臓アウトカム(serious cardiac outcome)を予測するための新しいリスク層別化ツールを作りました。2013年から2016年まで、アメリカにおいて60歳以上の原因不明の失神(unexplained syncope)または失神に近い症状(near syncope)で救急受診した3177例を対象に前向き観察研究を実施しました。救急部で重大な疾患が特定された例は除外で、全ての臨床、検査データを収集しました。一次転帰は30日以内の全死亡、重大な心臓アウトカムとしました。結果、平均年齢73歳(SD 9.0年)、一次転帰の発生は5.7%(95%CI 4.9% to 6.5%)でした。ベイズロジスティクス回帰分析を用いて、「FAINT score」を開発しました。具体的には、心不全の既往、不整脈の既往、過去の心電図異常、pro-BNPの上昇、高感度トロポニンTの上昇からなります。結果、FAINT score 0点群は、1点以上群と比べて、感度96.7%(95%CI 92.9% to 98.8%)、特異度22.2%(95%CI 20.7% to 23.8%)でした。FAINT scoreは構造化されていない臨床医の判断より正確性が高い傾向にあります。曲線下面積(area under the curve: AUC)は0点群0.704 (95%CI 0.669 to 0.739)、1点以上群0.630(95%CI 0.589 to 0.670)でした。高齢者の失神または失神に近い症状は心原性の可能性がありますが、FAINT scoreの0点の場合は、30日以内の死亡と重大な心臓アウトカムの除外において高い感度を持って判断可能です。さらなる外的妥当性の検証と向上が必要であると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
→https://www.annemergmed.com/article/S0196-0644(19)31113-8/fulltext
失神の原因のうち予後の悪い心原性失神の鑑別は重要です。しかし、一回の受診のみの限られたエピソードでは鑑別が困難なことも少なくありません。より詳しい精査が必要かどうか考慮するツールの登場は歓迎ですが、スコアリングの具体的中身を見ると、どれか一個でも当てはまった時点で精査をしないという選択肢は実際にはありえないので、実臨床で行っている臨床医の判断と大きな変わりはないのではないかと感じました。詳しくは主治医までご相談ください。
2020/2/19(水)、失神で救急部を受診した高齢者のリスク層別化スコアの有用性について調べた研究「Risk Stratification of Older Adults Who Present to the Emergency Department With Syncope: The FAINT Score」の結果をまとめました。