2020/4/9(木)、冠動脈疾患における侵襲的治療と保存的治療の健康状態転帰を比較した研究「Health-Status Outcomes with Invasive or Conservative Care in Coronary Disease: ISCHEMIA Research」の結果をまとめました。「ISCHEMIA」試験では、中程度から重度の虚血を有する安定冠動脈疾患において、血管造影と再血行再建を行う侵襲的治療は臨床イベントを減少させないことが明らかになりました。この試験の二次目標として、狭心症関連の健康状態(angina-related health status)を評価しました。狭心症関連症状、機能、生活の質を評価するために、侵襲的治療群2295例、保存的治療群2322例を対象に、シアトル狭心症質問票「Seattle Angina Questionnaire」(SAQ)を、1.5ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後とその後6ヶ月ごとに行いました。ベイズ枠組みの範囲内で累積確率の混合効果モデルで、両治療群間の差を評価しました。一次転帰の健康状態はSAQサマリースコア(0点から100点までのスコアで、スコアが高いほど良い健康状態を示す)にて評価、全ての解析は全参加者とベースラインの狭心症の頻度別に行いました。結果、ベースラインでは35%は過去一ヶ月の間に狭心症症状なし、SAQサマリースコアは両群とも増加、3ヶ月後、12ヶ月後、36ヶ月後のスコアは、侵襲的治療群のほうが保存的治療軍よりも、それぞれ4.1点(95%CI 3.2 to 5.0)、4.2点(95%CI 3.3 to 5.1)、2.9点(95%CI 2.2 to 3.7)高く差を認めました。差はベースラインにおける狭心症の頻度が多いほど大きく(週1回から毎日狭心症のある群は狭心症なしの群と比べて、3ヶ月時点で8.5点と0.1点、36ヶ月時点で5.3点と1.2点)認めました。中程度から重度の虚血を認める参加者の全体のうち、35%はベースラインにおいて狭心症症状を認めませんでした。侵襲的治療群は保存的治療群と比べて、狭心症関連健康状態の改善を認めました。全体のうち侵襲的治療を支持するかどうかの違いは、無症候性の場合には大きな差はなく、ベースラインにおいて狭心症症状を認める場合には大きな差となって反映されたと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
→https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1916370
「ISCHEMIA」試験で、残念ながら生命予後に差が着かなかったことがわかりましたが、QOLには差があったという報告です。多くの循環器内科医はQOLの改善のためではなく、生命予後も改善すると考えてPCIを行っている訳ですが、「ISCHEMIA」試験ではそのような有意差は認められませんでした。「ISCHEMIA」試験については詳しくは下記まとめをご覧ください。
2020/4/9(木)、安定冠動脈疾患に対する侵襲的治療と保存的治療を比較した研究「Initial Invasive or Conservative Strategy for Stable Coronary Disease: ISCHEMIA Research」の結果をまとめました。→https://ochanomizunaika.com/15162
多くの循環器内科医は「ISCHEMIA」試験の結果が出た今でもQOLの改善のためではなく、生命予後を改善しているというつもりでやっているのではないかと感じています。「ISCHEMIA」試験の対象は慢性冠症候群なので、急性冠症候群には当てはまりません。治療方針については自己判断せずに主治医にご相談ください。
2020/4/9(木)、冠動脈疾患における侵襲的治療と保存的治療の健康状態転帰を比較した研究「Health-Status Outcomes with Invasive or Conservative Care in Coronary Disease: ISCHEMIA Research」の結果をまとめました。