2020/8/22、敗血症性心原性ショック救命のための体外式膜型人工肺の有用性について調べた研究「Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation to rescue sepsis-induced cardiogenic shock: a retrospective, multicentre, international cohort study」の要旨をまとめました。敗血症性心筋障害(sepsis-induced cardiomyopathy)、心原性ショック(cardiogenic shock)は高い致死率です。敗血症性心原性ショックに対する静脈動脈体外式膜型人工肺(venoarterial extracorporeal membrane oxygenation: VA-ECMO)サポートの既存治療と比較しました。5つの大学病院のECMOセンター、18歳以上、敗血症性ショックで静脈動脈体外式膜型人工肺を受けた82例と、敗血症性ショックの3つの大規模データベースで静脈動脈体外式膜型人工肺を受けなかった130例を対照に転帰を比較する後ろ向き多施設全国コホート研究を実施しました。全例、心係数 3 L/min per m2以下、左室駆出率35%以下の重度の心筋障害を認め、強心薬スコア75 μg/kg per min以上、乳酸アシデミア4mmol/L以上の重度の血行動態代償を認める例を組み込み基準としました。主要転帰は90日後の生存率としました。併存疾患の傾向スコア調整解析を行いました。結果、ベースラインにおいて、静脈動脈体外式膜型人工肺による治療群は対照群と比べて、より重症な心筋障害(mean cardiac index 1·5 L/min per m 2 vs 2·2 L/min per m 2, LVEF 17% vs 27%)、より重症な血行動態不全(inotrope score 279 μg/kg per min vs 145 μg/kg per min, lactataemia 8·9 mmol/L vs 6·5 mmol/L)、より重症な酸素化不良(Sequential Organ Failure Assessment score 17 vs 13)を認めており、全て有意差(p<0·0001)を認めました。90日後生存率は静脈動脈体外式膜型人工肺群で対照群と比べて有意に高率(60% vs 25%, risk ratio [RR] for mortality 0·54, 95% CI [0·40–0·70]; p<0·0001)でした。傾向スコア調整後、体外式膜型人工肺は生存率改善(51% vs 14%, adjusted RR for mortality 0·57, 95% CI [0·35–0·93]; p=0·0029)を認めました。乳酸クリアランス、カテコラミンクリアランスは体外式膜型人工肺治療群で有意に改善を認めました。体外式膜型人工肺治療群の生存49例において、32例は大規模センターにて治療、1年後の追跡で、健康関連生活の質をShort Form-36で評価しました。重度の敗血症性心原性ショックで静脈動脈体外式膜型人工肺治療を受けた場合、体外式膜型人工肺治療を受けなかった対照群と比べて、顕著かつ有意に生存率は改善しました。傾向調整解析を行いましたが、交絡因子の可能性は完全には排除出来ませんでしたと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30733-9/fulltext
最近話題のECMOですが、敗血症による心原性ショックのサポート手段としても有効であったという報告です。
2020/8/22、敗血症性心原性ショック救命のための体外式膜型人工肺の有用性について調べた研究「Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation to rescue sepsis-induced cardiogenic shock: a retrospective, multicentre, international cohort study」の要旨をまとめました。