2020/9/11、DPP4阻害薬と大動脈弁狭窄症の石灰化の進行抑制の関係について調べた研究「Dipeptidyl peptidase-4 inhibition to prevent progression of calcific aortic stenosis」の要旨をまとめました。DPP4阻害薬(dipeptidyl peptidase-4 inhibitors)の使用、心筋組織への分布プロファイル、抗石灰化作用は、大動脈弁狭窄症の進行リスクと関連しています。DPP4阻害薬5種類のうち、2種類は心筋血清濃度比が比較的良好で、マウスにおいて抗石灰化作用、試験管内の実験では良好でした。カルテ記録212例、平均年齢72歳、男性111例、糖尿病、軽度から中程度の大動脈弁狭窄症、抗石灰化作用良好のDPP4阻害薬28例(13%)、抗石灰化作用非良好のDPP4阻害薬69例(33%)、DPP4阻害薬使用なし115例(54%)、心エコーで追跡しました。結果、最大大動脈弁通過速度(Maximal transaortic velocity: Vmax)は中央値3.7年間の追跡期間で、2.9m/sから3.5m/sへ増加、変化はDPP4阻害薬使用群とDPP4阻害薬非使用群で差(p=0.143)は認めませんでした。しかしながら、最大大動脈弁通過速度の増加は、抗石灰化作用良好DPP4阻害薬使用群は、抗石灰化作用非良好DPP4阻害薬使用群またはDPP4阻害薬非使用群と比べて、有意に低値(p=0.018)でした。重症大動脈弁狭窄症への進行は、抗石灰化作用良好DPP4阻害薬使用群(7.1%)は、抗石灰化作用非良好DPP4阻害薬使用群(29.0%; p=0.03)、DPP4阻害薬非使用群(29.6%; p=0.01)と比べて減少しました。年齢、ベースラインの腎機能、大動脈弁狭窄症の重症度を調整後のCox回帰解析では、抗石灰化作用良好DPP4阻害薬使用群で重症大動脈弁狭窄症への進行は有意に低値(HR 0.116, 95% CI 0.024 to 0.551, p=0.007)を認めました。良好な薬物動態学、薬力学を持つDPP4阻害薬は、大動脈弁狭窄症の進行リスク低下と関連していました。この結果はDPP4阻害薬の位置付けを無作為化臨床試験で考慮すべきでしょうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32917732
DPP4阻害薬が大動脈弁狭窄症の進行抑制に関連しているかも知れないという報告です。今回の論文で検討した抗石灰化作用良好DPP4阻害薬とは、リナグリプチン(トラゼンタ)とgemigliptin(日本未承認)の2薬とのことです。シタグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチンでは大動脈弁狭窄症進行抑制作用は認めなかったとのことです。既存の薬でもまだまだ未知の作用があるんですね。
2020/9/11、DPP4阻害薬と大動脈弁狭窄症の石灰化の進行抑制の関係について調べた研究「Dipeptidyl peptidase-4 inhibition to prevent progression of calcific aortic stenosis」の要旨をまとめました。