「週刊東洋経済」2018/6/16号の製薬業界特集の記事にお茶の水循環器内科院長の五十嵐が取材協力しました。国内トップの製薬企業、武田薬品工業が、アイルランドの製薬メーカー、シャイアーを買収するとの発表は、日本国内の企業M&Aの史上最高額ということもあって業界関係者を驚かせました。特集中盤の「医師への過剰接待は過去の話、不要論が根強い高収入職種、MRはリストラに戦々恐々」という記事に取材協力をしました。日本企業の全盛期には、医療機関にいかに新薬を売るかが経営上の重要課題であった時代には、いかに医師に自社製品を処方してもらえるか、いかに訪問回数を増やすか、業界用語でSoV(Share of Voice)などと呼ばれる「訪問回数」が一つのKPIだった時代もあったのかも知れません。しかし、今は必要な医薬品情報はインターネットで容易に調べられる時代になり、またMRも定められた情報以外の情報は提供出来なくなり、面会しなければならない必要性が激減しました。結果、日本の製薬企業の多くは、内容の薄い訪問、形式的な「訪問回数」を競うような、いびつな構造となってしまいました。一方で、これからの世代の医師の多くは、エビデンスベイスドメディスンと言って、科学的根拠に基づいて治療方針を決定するようにトレーニングを受けている世代であり、少なくとも私はMRの訪問回数によって処方内容が変わるということは一切ありません。良い薬であれば採用するし、そうでなければ使わない、それ以上でも以下でもありません。新薬やガイドライン改定、定期的に行っている院内勉強会など、臨床上必要な情報に関しては引き続き情報提供活動をお願いしています。実際のところ、以前は一日10社ほどだったMRの訪問回数は、MR向け訪問規定を策定後は週1件程度に面会時間の削減に成功しました。臨床上必要な情報の質を落とさずに、面会時間を約50件から約1件に減らせることが出来たのは、時間の効率化としては非常によかった一方で、今までの残り49件ほどの訪問は何だったのかと、訪問回数をKPIとしたMR活動の存在意義には大きな疑問を感じざるを得ません。製薬企業の今後のあるべき形は、営業活動を競うのでなく、医薬品開発、よりよい薬作りという製薬企業の本業に注力していくのが本来の製薬企業としてのあるべき形ではないでしょうか。そのようなことを取材でお話しました。詳しくは2018/6/16号の「週刊東洋経済」をご覧ください。