「循環器内科.com」に「頸動脈エコー」についてまとめました。
頸動脈エコー→http://循環器内科.com/cau
【頸動脈エコーとは】
頸動脈エコー(Carotid artery ultrasonography)とは、超音波で頸部の動脈を観察する検査です。総頸動脈(Common carotid artery: CCA)、内頚動脈(Internal carotid artery: ICA)、外頸動脈(External carotid artery: ECA)、とその分岐部(Carotid bulb)、が主な観察の対象です。放射線被曝がなく、身体への害がない安全な検査です。
【頸動脈エコーの目的】
頸動脈エコーの目的は、主に動脈硬化の評価です。網膜と頸部の血管は身体の血管の中で観察しやすい部位であり、網膜が全身の比較的細い血管の動脈硬化の程度を反映すると言われているのに対し、頸動脈は全身の比較的太い血管の動脈効果の程度を反映すると言われています。プラークの有無、サイズ、性状、プラークスコア、狭窄の有無、狭窄がある場合は狭窄率、血流速度、頸動脈狭窄症の程度、などを評価します。無症候性または症候性の頸動脈狭窄症は、脳梗塞のリスク因子であり、外科的治療として頸動脈内膜剥離術(Carotid endarterectomy: CEA)、頸動脈ステント留置術(Carotid artery stenting: CAS)を術後評価の検査としても行われます。
【頸動脈エコーでわかること】
頸動脈エコーにおける動脈硬化の評価の指標として最もよく利用されるものとして、IMTがあります。血管は、一般に、内膜、中膜、外膜の3層からなりますが、エコー所見では、内膜と中膜は判別不能であり、内膜と中膜の合わせた厚み、中膜内膜複合体厚(Intima media thickness: IMT)と呼び、動脈硬化の程度、心血管疾患のリスク指標になることがわかっています。IMTの基準範囲は1.0mm以下、1.1mm以上を内膜中膜肥厚と診断します。最大内膜中膜厚(Maximum intima-media thickness: Max IMT)、平均内膜中膜厚(Mean intima-media thickness: mean IMT)なども動脈硬化の指標として有用です。「超音波による頸動脈病変の標準的評価法2016(案)」では、「IMTの臨床的意義」として、次のようにまとめています。引用すると、
・IMTはプラークが出現する以前の早期動脈硬化症の定量的評価として重要である。
・IMTの経年的増厚はイベント増加と関連していると考えられる。
・薬物治療や生活習慣の改善によりIMC 肥厚の進展を抑制したという報告があるが、それがイベントの抑制と関連しているかは、未だ意見の一致をみていない。
・IMT経年変化はあくまでも大規模研究で使用された指標であり、個人に対する治療効果の判定には用いるべき ではない。
詳しくは「超音波による頸動脈病変の標準的評価法2016(案)」をご覧ください。
→https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/Carotid_artery_2016.pdf
以上から、要するに、動脈硬化の早期スクリーニングの指標、心血管イベント発症リスクの指標の一つとしては参考になるが、治療効果の判定には使えない、という位置付けです。スタチンというグループの薬の中にはIMT退縮効果が認められいるものもありますが、IMTの値の変化自体で一喜一憂する必要はないということですので、注意が必要です。
また、プラーク(plaque)とは「1.1mm以上の限局した隆起性病変」と定義され、特に最大厚が1.5mmを超えるプラークを臨床的意義が高いとしています。プラークのサイズ、表面の形態、内部の性状、可動性などで総合的に評価を行い、特に可動性プラーク、低輝度プラーク(特に薄い線維性被膜で覆われた大きな脂質コアをもつ脆弱な動脈硬化巣を有する例)、潰瘍形成を認めるプラークは、注意すべきとされています。いずれにせよ、動脈硬化の危険因子、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙等があれば、各リスク因子を治療するということに尽きます。
【頸動脈エコーの流れ】
お茶の水循環器内科では主に「心臓画像クリニック飯田橋」さんに心臓画像検査を依頼しています。
心臓画像クリニック飯田橋→http://www.cviclinic.com
(1)当院から検査の予約を取ります。営業時間外の場合はご自身でご予約の取り方をご説明します。その際に検査の注意事項、前日、当日の確認事項を説明します。
(2)予約当日、飯田橋にある心臓画像クリニックに向かいます。予約時間の30分前までには到着するようにしましょう。受付後の流れをざっくり言うと、問診、検査の説明、注意事項の確認、着替え、待合室で検査を待ちます。検査の順番になったら検査室に呼ばれます。心エコー自体は長くて20分間程度です。検査後はその日のうちに医師から検査結果の説明があります。もし緊急で対応が必要な状態であると判断された場合は、速やかに適切な医療機関へご紹介という体制です。詳しくは心臓画像クリニックさんのページをご覧ください。
→http://www.cviclinic.com/flow.html
(3)当院に検査結果の報告書が届きますので、後日説明を聞きにいらっしゃってください。異常なしであれば異常なしという説明、治療が必要であれば適宜適切な治療、追加の検査が必要であれば適宜その手配と、それぞれ診察を進めていきます。
【心エコー検査の費用】
保険適応の場合、3割負担で、2000円程度です。時間は検査自体は長くて20分くらい、全体で70分前後あれば大丈夫でしょう。心エコー、ホルター心電図、心臓MRIなど他の検査を追加する場合はそれぞれ追加の検査代、時間が掛かります。また、特に何も症状はないけれどなんとなく心臓が心配という場合、保険適応外で心臓ドックとなり、ドックの費用が掛かります。
【重要】ご来院前にご確認ください。
お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。対象は狭心症、心筋梗塞等の冠動脈疾患、心房細動を始めとする不整脈、心血管疾患の危険因子としての高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病、慢性心不全等の循環器疾患です。一般的な内科診療は行っていませんので予めご了承ください。都内の医療機関探しは東京都医療機関案内サービスひまわりをご活用ください。
東京都医療機関案内サービスひまわり:03-5272-0303
→https://www.himawari.metro.tokyo.jp/qq13/qqport/tomintop
【お茶の水循環器内科】
お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。当院は2014年秋、「心血管疾患の一次予防」を理念に神田小川町にてスタートしました。2016年春、現在の神田神保町にお引越し、2018年春、「その医療は心筋梗塞を減らすだろうか?」という行動規範のもと、循環器専門の医療機関になりました。世の中には救える病気とそうでない病気があります。その中で、心筋梗塞と脳卒中は血管の故障が原因であり、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、心房細動等の心血管疾患の危険因子をコントロールすることで十分に予防可能です。心血管疾患の危険因子に対して適切な治療介入と治療継続のために、お茶の水循環器内科は夜間も土日も診療をオープンにしています。心筋梗塞と脳卒中を防ぐこと、これが当院のミッションです。お茶の水循環器内科をどうぞよろしくお願いいたします。
お茶の水循環器内科院長五十嵐健祐
【具体的な診療範囲】
お茶の水循環器内科は循環器専門の医療機関です。循環器内科とは心臓と血管を専門に診る診療科です。具体的には、狭心症、心筋梗塞等の冠動脈疾患、心房細動を始めとする不整脈、心血管疾患の危険因子としての高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病、慢性心不全等の循環器疾患です。循環器内科の診療範囲を具体的にまとめました。
・冠動脈疾患(急性心筋梗塞、労作性狭心症、他)
・心筋梗塞後、抗血小板療法、ステント留置後の管理、バイパス術後の管理・慢性心不全の管理
・心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、他)
・弁置換術後の管理、弁形成術後の管理、抗凝固療法・心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症、高血圧性心肥大、他)
・大動脈瘤、大動脈解離後の管理
・不整脈(心房細動、房室ブロック、上室期外収縮、心室期外収縮、他)
・心房細動の抗凝固療法、心原性脳塞栓症の予防、アブレーション治療の適応の評価、アブレーション治療後の管理
・脳卒中、脳血管障害、脳梗塞(ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症)、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作、脳卒中後の管理
・高血圧症、二次性高血圧症
・脂質異常症、家族性高コレステロール血症
・2型糖尿病、1型糖尿病、糖尿病合併症の管理、インスリン管理
・慢性腎臓病、腎硬化症の管理、糖尿病性腎症の管理
・その他、健診後の再検査、食事指導、運動指導、禁煙外来、など
以上、心臓と血管を専門に診る診療科が循環器内科です。高血圧症、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病等の生活習慣病も心血管疾患の危険因子として循環器内科の守備範囲です。心筋梗塞や脳卒中にならないようにする、一度なってしまっても再発しないようにする、というのが循環器内科の仕事です。予防に勝る治療はありません。受付または主治医までお気軽にご相談ください。