2019/11/29(金)、乳製品の健康への影響を調べた研究「Associations of dairy intake with risk of mortality in women and men: three prospective cohort studies」の結果をまとめました。アメリカにおいて、乳製品の摂取と死亡率との関係を調べるために、「Nurses’ Health Study」「Nurses’ Health Study II」「Health Professionals Follow-up Study」の参加者、女性16万8153例、男性4万9602例、合計21万7755例を32年間追跡しました。5万1438例の死亡、心血管死1万2143例、がん死1万5120例でした。解析の結果、全死亡のリスクは、乳製品の総摂取量が最も低い群(平均一日0.8回摂取)を基準として、一日平均1.5回摂取群0.98(95%CI 0.96-1.01)、一日平均2回摂取群1.00(95%CI 0.97-103)、一日平均2.8回摂取群1.02(95%CI 0.99-1.05)、一日4.2回摂取群1.07(95%CI 1.04-1.10)と有意に増加(p for trend <0.001)を認めました。乳製品別の解析として、特に全乳(whole milk)の摂取は有意に全死亡の増加(一日0.5回摂取ごとにHR 1.11増加、95%CI 1.09-1.14)、心血管死9%増加(HR 1.09、95%CI 1.03-1.15)、がん死11%増加(HR 1.11 95%CI 1.06-1.17)と関連を認めました。脱脂粉乳(skimmed milk)または低脂肪乳(low fat milk)は、わずかながら全死亡、心血管死のリスクを高めました。チーズとヨーグルト(cheese and yogurt)は関連を認めませんでした。代替品の選択肢として、ナッツとマメ科植物(nuts and legumes)は、14%全死亡リスクの低下と関連(HR 0.86 95%CI 0.78 to 0.95)をしていました。全粒穀物(whole grains)は、11%全死亡の低下と関連(HR 0.89 95%CI 0.84 to 0.93)していました。赤肉と加工肉(red and processed meat)は5%全死亡リスクの増加を関係(HR 1.05 95%CI 1.01 to 1.09)していました。詳しくは論文をご覧ください。
→https://www.bmj.com/content/367/bmj.l6204
乳製品の過剰摂取は、コレステロール、中性脂肪の増加と関連し、動脈硬化と関連すると言われていましたが、軽度ではありますが、その傾向があることがわかりました。赤肉や加工肉はさらに死亡リスクと関係します。ナッツ、大豆、全粒穀物は良さそうであることもわかりました。この手の栄養学的な研究は様々な結果が出ることもあり、相反する報告が上がると一見混乱しがちですが、迷った時は規模の大きさと研究デザインが決め手になります。一般的に、規模は小さいよりお大きいほう、追跡期間は短いよりも長いほう、研究デザインとしては後ろ向きであるよりは前向き、観察研究よりは介入研究のほうが信頼性が高い研究です。その点、今回の21万7755例の32年間の追跡研究というのは信頼性が高いと言えるでしょう。ちなみに、翻訳しながら「daily」と「dairy」の違いに途中で気が付きました。「daily」は毎日で、「dairy」は乳製品です。
2019/11/29(金)、乳製品の健康への影響を調べた研究「Associations of dairy intake with risk of mortality in women and men: three prospective cohort studies」の結果をまとめました。