2020/3/24(火)、末期腎不全における心房細動の経口抗凝固薬と心血管転帰について調べた研究「Oral Anticoagulation and Cardiovascular Outcomes in Patients With Atrial Fibrillation and End-Stage Renal Disease」の結果をまとめました。

2020/3/24(火)、末期腎不全における心房細動の経口抗凝固薬と心血管転帰について調べた研究「Oral Anticoagulation and Cardiovascular Outcomes in Patients With Atrial Fibrillation and End-Stage Renal Disease」の結果をまとめました。心房細動は末期腎不全(end-stage renal disease: ESRD)において合併の頻度は高いですが、経口抗凝固薬の安全性についてエビデンスは十分ではありませんでした。末期腎不全の心房細動に対して経口抗凝固薬の処方パターンと心血管疾患へ与える影響を調べるために、2007年から2013年まで保険請求データから経口抗凝固薬の処方データと、死亡、全脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、出血入院を解析しました。8410例が末期腎不全と心房細動を合併していました。3043例(36.2%)は経口抗凝固薬の投与を受けていました。傾向スコアマッチング後、末期腎不全と心房細動で経口抗凝固薬の投与あり1519例、末期腎不全で経口抗凝固薬の投与なしの3918例で比較しました。経口抗凝固薬による治療は脳卒中による入院(HR 1.00 95%CI 0.23 to 1.35 p=0.97)、死亡(HR 1.02 95%CI 0.94 to 1.10 p=0.62)と関連を認めませんでした。経口抗凝固薬は出血による入院(HR 1.26 95%CI 1.09 to 1.46 p=0.0017)、頭蓋内出血(HR 1.30 95%CI 1.07 to 1.59 p=0.0094)を有意に増加させました。末期腎不全における心房細動に対して経口抗凝固薬の有用性は低く、末期腎不全において脳卒中や死亡を減らさないで、出血による入院、頭蓋内出血を増加させることがわかりました。末期腎不全における心房細動の脳卒中予防においては別の戦略が必要とされると論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735109720302643
経口抗凝固薬の多くは末期腎不全に対して適応が通っていません。実質的にワルファリンを使うしかないのですが、コントロールが難しい場合が多く苦労します。逆に今回、末期腎不全で心房細動がある場合にも63.8%は経口抗凝固薬が投与されていなかったということで、抗凝固療法をしないというのも選択肢に挙がります。カテーテルアブレーションや左心耳閉鎖術も末期腎不全の場合には安全に行うことが難しいのが現状です。

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