2020/3/29(日)、静脈血栓塞栓症に対するPCSK9阻害薬の効果について調べた研究「The Effect of PCSK9 Inhibition on the Risk of Venous Thromboembolism」の結果をまとめました。

2020/3/29(日)、静脈血栓塞栓症に対するPCSK9阻害薬の効果について調べた研究「The Effect of PCSK9 Inhibition on the Risk of Venous Thromboembolism」の結果をまとめました。コレステロール値と静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism: VTE)リスクとの関係、静脈血栓塞栓症に対するPCSK9のクラスエフェクト(class effect)を調べるために、エボロクマブ「FOURIER」試験とアリロクマブ「ODYSSEY OUTCOMES」試験のメタ解析を行いました。静脈血栓塞栓症事象として深部静脈血栓症、肺塞栓症、エボロクマブと静脈血栓塞栓症の関係とベースラインの脂質、遺伝子解析から多遺伝子リスクスコア(polygenic risk score)からエボロクマブで顕著に静脈血栓塞栓症リスク減少を認めるハイリスク群の特定を試みました。結果、「FOURIER」試験では、エボロクマブは静脈血栓塞栓症リスクを有意に減少(HR 0.71 95%CI 0.50-1.00 p=0.05)、最初の1年では有意差(HR 0.96 0.57-1.62)を認めず、1年以降に46%の減少(HR 0.54 95%CI 0.33-0.88 p=0.014)を認めました。「FOURIER」試験、「ODYSSEY OUTCOMES」試験のメタ解析では、PCSK9阻害薬によって静脈血栓塞栓症は31%相対リスク低下(HR 0.69 95%CI 0.53-0.90 p=0.007)を認めました。ベースラインのLDLコレステロール値と静脈血栓塞栓症のリスク低下の関連は認めませんでした。ベースラインのリポタンパク(a)値が高値のグループでは、エボロクマブはリポタンパク(a)を33nm/L減少、静脈血栓塞栓症リスクを48%減少 (HR 0.52 95%CI 0.30-0.89 p=0.017)を認めました。一方で、ベースラインのリポタンパク(a)値が低値のグループでは、エボロクマブはリポタンパク(a)の減少は7nm/lのみで、静脈血栓塞栓症の有意な減少(Pinteraction for HR 0.087 Pheterogeneity for ARR 0.037)は認めませんでした。ベースラインのリポタンパク(a)と静脈血栓塞栓症リスク減少には有意な関係(P=0.04)を認めました。多遺伝子リスクスコア解析では、多遺伝子リスクスコアの高い群はそうでない群と比べて、2倍以上の相対リスク(Pinteraction=0.04)、静脈血栓塞栓症の絶対リスク減少(Pheterogeneity=0.009)を認めました。PCSK9阻害薬で静脈血栓塞栓症リスクを有意に減少を認めました。リポタンパク(a)の減少がこの効果の重要な媒介ではないかと考えており、現在進行中のリポタンパク(a)阻害薬の開発にとっても重要な発見となるだろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.046397
PSCK9阻害薬で静脈血栓塞栓症が減少するかについて、エボロクマブ「FOURIER」、アリロクマブ「ODYSSEY OUTCOMES」、2つの試験をメタ解析した結果、PCSK9阻害薬は静脈血栓塞栓症を減らすという報告です。脂質低下薬が抗凝固作用としての効果を持つとのことで興味深いです。静脈血栓塞栓症予防のためにPCSK9阻害薬を使うにはあまりに高価ですが、今後リポタンパク(a)阻害薬の開発に役立つかも知れないとのことです。また新しい情報が分かり次第お知らせします。


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