2020/3/29(日)、心房細動で急性冠症候群や経皮的冠動脈形成術後の短期または長期における抗血栓療法のリスクベネフィットのトレードオフについて調べた研究「The Risk / Benefit Tradeoff of Antithrombotic Therapy in Patients with Atrial Fibrillation Early and Late After an Acute Coronary Syndrome or Percutaneous Coronary Intervention: Insights from AUGUSTUS」の結果をまとめました。

2020/3/29(日)、心房細動で急性冠症候群や経皮的冠動脈形成術後の短期または長期における抗血栓療法のリスクベネフィットのトレードオフについて調べた研究「The Risk / Benefit Tradeoff of Antithrombotic Therapy in Patients with Atrial Fibrillation Early and Late After an Acute Coronary Syndrome or Percutaneous Coronary Intervention: Insights from AUGUSTUS」の結果をまとめました。「AUGUSTUS」試験において、心房細動(atrial fibrillation: AF)で、急性冠症候群(acute coronary syndrome: ACS)、経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention: PCI)を受ける例では、アピキサバンはビタミンK拮抗薬よりも、プラセボはアスピリンよりも出血を減らしましたが、虚血イベントはプラセボ群よりも高く認めました。アピキサバン、ビタミンK拮抗薬、アスピリン、プラセボの出血リスクと虚血イベントを防ぐベネフィットとトレードオフについて解析しました。「AUGUSTUS」試験の参加者4614例は心房細動で、直近の急性冠症候群か、経皮的冠動脈形成術を受けて、P2Y12阻害薬を投与、アスピリン追加群とプラセボ群、オープンラベルでアピキサバン群とワルファリン群に分けて、6ヶ月間追跡しました。出血アウトカム、虚血アウトカムについて30日以内、30日から6ヶ月追跡しました。結果、ビタミンK拮抗薬に比べて、アピキサバンは出血リスクと虚血リスクにおいて、30日間、30日後から6ヶ月間において同等か減少を認めました。プラセボと比べて、アスピリンは30日間、出血リスクの増加(絶対リスク差 0.97%, 95% CI 0.23 to 1.70)、重症虚血イベントの減少(絶対リスク差 -0.91%, 95% CI -1.74 to -0.08)を認めました。30日後から6ヶ月間では、アスピリン群はプラセボ群と比べて重症出血リスク(絶対リスク差 1.25%, 95% CI 0.23 to 2.27)、重症虚血イベントリスクは同等(絶対リスク差 -0.17%, 95% CI -1.33 to 0.98)でした。心房細動で、直近の急性冠症候群、経皮的冠動脈形成術を受けてP2Y12阻害薬を投与されている場合、ビタミンK拮抗薬よりもアピキサバンが適しており、アスピリンは30日以内では重症出血の増加と重症虚血イベントの減少が同等でトレードオフという結果でした。30日移行ではアスピリンは虚血イベントを有意に減少させることなく、出血を増加させ続けることがわかりました。心房細動で経口抗凝固薬が投与されており、急性冠症候群、経皮的冠動脈形成術後にアスピリンの使用期間について何が理想か、この結果が共有されて、患者中心の意思決定における参考にすると良いだろうと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.046534
出血リスクと虚血イベントの抑制は昔からあるテーマですが、抗血小板薬2剤併用療法で抗凝固薬が必要な場合には無視出来ないほど出血リスクが高いことが問題となっています。2020/3/13(金)発表の日本循環器学会「2020年JCSガイドラインフォーカスアップデート版冠動脈疾患患者における抗血栓療法」において、ある程度は解決されました。具体的には、抗凝固薬と抗血小板薬2剤併用療法の併用は原則として入院中2週間以内のみとし、その後は速やかに抗凝固薬と抗血小板薬1剤の併用に切り替え、12ヶ月後以降は抗凝固薬単独に切り替えるなどとし、抗血栓療法のメリットの最大化、出血のデメリットの最小化を目指します。詳しくは日本循環器学会「2020年JCSガイドラインフォーカスアップデート版冠動脈疾患患者における抗血栓療法」のまとめをご覧ください。
「2020/3/13(金)、日本循環器学会「2020年JCSガイドラインフォーカスアップデート版冠動脈疾患患者における抗血栓療法」の内容をまとめました。
https://ochanomizunaika.com/14369


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