2019/12/9(月)non-HDLコレステロールの心血管リスク層別化への適応について調べた研究「Application of non-HDL cholesterol for population-based cardiovascular risk stratification: results from the Multinational Cardiovascular Risk Consortium」の結果をまとめました。

2019/12/9(月)non-HDLコレステロールの心血管リスク層別化への適応について調べた研究「Application of non-HDL cholesterol for population-based cardiovascular risk stratification: results from the Multinational Cardiovascular Risk Consortium」の結果をまとめました。
血中脂質濃度と長期の心血管疾患の発症、脂質低下療法と心血管疾患転帰、血漿中のnon-HDLコレステロール濃度と心血管疾患リスクの関係を調べるために、non-HDLコレステロールと長期の心血管疾患イベントの可能性の簡易ツールと脂質低下療法によるリスク低下モデルを開発しました。リスク評価、リスクモデル研究、ヨーロッパ、オーストラリア、北アメリカから19カ国が参加する、国際心血管リスクコンソーシアム(Multinational Cardiovascular Risk Consortium)のデータから、ベースラインにおいて心血管疾患の既往のなく、心血管疾患転帰のデータを収集しました。動脈硬化性心血管疾患の一次複合転帰は、冠動脈疾患事象、虚血性脳卒中の発症と定義しました。ヨーロッパのガイドラインの基準に準じて、性別、年齢、既知の修正可能な心血管リスク因子を調整、多変量解析を実施しました。導出、検証デザインとして、年齢、性別、危険因子に基づいた75歳までの心血管疾患事象の予測の評価ツールと、non-HDLコレステロールが50%低下した場合のリスク減少モデルを作りました。
コンソーシアムデータベースから44コホート、524444例のうち、38コホート、398846例のデータ、女性184055例(48·7%)、平均年齢51.0歳(四分位範囲40·7–59·7)、199415例は導出コホート(derivation cohort)、199431例は検証コホート(validation cohort)としました。最大43.6年(中央値13.5年、四分位範囲7.0-21.1)の追跡期間の間に、心血管疾患転帰54542例が発生しました。発症率曲線解析の結果、30年間の心血管疾患イベント率は、non-HDLコレステロールが増えるほど増加(女性においてnon-HDLコレステロール2.6mmol/dL 7.7%、non-HDLコレステロール5.7mmol/dL 33·7%、男性において12.8%、43.6% p<0.0001)を認めました。多変量調整Coxモデルでは、non-HDLコレステロールが2.6mmol/dL未満の場合、non-HDLコレステロール濃度と心血管疾患の関係は男女ともに関係(女性において、non-HDLコレステロール2.6-3.7mmol/dLにおいてHR 1.1 95%CI 1·0–1·3、non-HDLコレステロール5.7mmol/dLにおいてHR 1·9 95%CI 1·6–2·2、男性においてHR 1·1 955CI 1·0–1·3、HR 2·3 95%CI 2·0–2·5)を認めました。non-HDLコレステロールによる心血管疾患事象の予測の導出ツールは、導出コホートと検証コホートと高い相同性(comparability)を認め、心血管疾患の予測においてキャリブレーション曲線分析では誤差の平均平方根は1%未満でした。non-HDLコレステロールを50%低下させることは、75歳までの心血管疾患リスク低下を関係をしており、リスク低下はコレステロール濃度低下するほど顕著でした。血中のnon-HDLコレステロール濃度は動脈硬化性心血管疾患の長期リスクと強い関係を認めました。長期のリスク評価のためのシンプルなツール、早期の脂質低下介入のベネフィットとなる可能性があります。一次予防の戦略において、医師患者間のコミュニケーションによって有用ですと論文ではまとめています。詳しくは論文をご覧ください。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(19)32519-X/fulltext
動脈硬化性疾患のリスク評価にはLDLコレステロールが最も多く使われますが、non-HDLコレステロールもしばしば使われます。LDLコレステロールの値はTG 400未満においてはFriedewaldの式から計算法で求められることも多く、式は以下の通りです。
LDL=TC-HDL-1/5TG
LDL+1/5TG=TC-HDL=non-HDL
ここで、LDLにTGの1/5の数値を足したものは、総コレステロールからHDLコレステロールを引いたものに等しく、この値をnon-HDLコレステロールと呼んでいるに過ぎません。LDLコレステロールとの違いは、1/5TGがあるかないかの違いだけで、non-HDLが低いほうが良いとは、LDLもTGも低いほうが良いと言っていることとイコールです。TGの1/5という係数から考えても、動脈硬化予防のためには、第一にLDLコレステロールを下げること、第二にTGを下げることと考えていただいて良いのではないかと思います。


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