2020/3/31(火)、内分泌内科、糖尿病内科とCOVID-19についての声明「Our Response to COVID-19 as Endocrinologists and Diabetologists」の内容をまとめました。

2020/3/31(火)、内分泌内科、糖尿病内科とCOVID-19についての声明「Our Response to COVID-19 as Endocrinologists and Diabetologists」の内容をまとめました。SARS-CoV-2によるCOVID-19は世界的流行となっており、2020/3/31現在、WHOによると世界190カ国、730000感染、35000死者と報告されています。週単位、月単位で増加、一般診療へ影響を及ぼしています。その上で、いくつかの原則に従って大きな影響を及ぼすことが可能です。第一に、グルココルチコイドで治療中の場合は、シックデイルールの徹底が重要で、ステロイド補充療法による副腎不全(adrenal insufficiency)を引き起こすことがあります。COVID-19においては、乾性咳嗽の持続、発熱時には、解熱傾向までの期間、経口グルココルチコイドの投与量を速やかに2倍にする必要があるでしょう。衰弱、嘔吐や下痢を起こしている場合は緊急治療、非経口のグルココルチコイド治療を考慮すべきです。副腎不全を防ぐためには、高用量投与を考慮します。ハイリスク群としては、糖尿病、高血圧、慢性炎症疾患等が報告されています。生理的な量を超えたグルココルチコイドの投与は、免疫抑制作用にも注意です。3ヶ月を超える長期のグルココルチコイド治療の病歴がある場合には考慮します。SARS、MERSの急性呼吸促迫症候群の過去の経験から、グルココルチコイド治療は人工呼吸、死亡のハイリスクと関係していると報告しています。第二に、下垂体疾患、神経内分泌疾患も考慮すべきです。原発性副腎不全、下垂体機能低下症による二次性副腎不全もグルココルチコイドのストレス投与を考慮すべきです。尿崩症では、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症等の電解質異常に注意します。発熱、頻呼吸による無症候性の体液喪失、意識障害、摂食不良にも注意です。第三に、糖尿病において、ウイルス感染症の重症化リスクは特に重症化に注意です。中国武漢市の報告によると、糖尿病、高血圧は、COVID-19の重症化に関わっていました。COVID-19の重症化は、特異的なものなのか、単に糖尿病による感染症の重症化リスクを判定したものなのかはよくわかっていません。現行のアメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)の予防ガイドラインでは、糖尿病は通常の予防と違いはありませんが、糖尿病が重症化リスクであることは認識しておくべきで、息切れ、初値等の症状があった場合には医療従事者は注意深く観察するべきでしょう。最後に、臨床研究として、診断、革新的な治療、ワクチンの開発を通して、研究と革新がこの危機のソリューションとなることを実現するべきです。内分泌関連の観察も、SARS-CoV-2が細胞内へ侵入するメカニズムの解明に役立つ可能性があります。アンジオテンシン変換酵素2(angiotensin-converting enzyme 2: ACE2)は、SARS-CoV-2の受容体として確立していますが、感染との関連性については相反するデータが出ています。ACE阻害薬(angiotensin-converting enzyme inhibitors)、ARB(angiotensin receptor blockers)は、ACR2のアップレギュレーションを通じてCOVID-19の感受性と重症化の増加と関連するかも知れない、喫煙者ではACE2のアップレギュレーションが起こっており予後不良を説明可能かも知れないと言われているが、前段階的な報告でしかなく、現段階では、処方を変更するべきものではありません。APN01はAPEIRON社によって急性肺損傷、急性呼吸促迫症候群、肺動脈高血圧症の治療のために開発されたヒトACE2のリコンビナントで、ウイルスの細胞内への侵入を遅らせ、ウイルスの拡大を抑制し、有益な可能性があり、現在臨床試験が進行中です。逆に、アンジオテンシンIIは肺胞内皮細胞のアポトーシスを刺激することが知られており、ロサルタンのようなアンジオテンシン受容体1阻害薬によって阻害することによって、COVID-19感染症の急性呼吸促迫症候群の死亡率を低下させる可能性があります。もしかしたら、膜貫通型セリンプロテアーゼ2(transmembrane protease serine 2)はSARS-CoV-2のスパイクプロテインのプライミング、放出に必要であり、ヒントがあるかも知れません。カモスタットメシル酸塩(Camostat mesylate)は、膜貫通型セリンプロテアーゼ2阻害薬で、日本において膵炎の治療に使われますが、SARS-CoV-2の肺の細胞への侵入を防ぐかも知れません。内分泌関係のターゲット、科学的発見の最先端で、このパンデミックに団結して取り組むことで、科学的発見の最先端となるでしょう。詳しくは下記をご覧ください。
https://academic.oup.com/jcem/article/105/5/dgaa148/5814115
特に関係があるのが第三の糖尿病に関しての内容です。糖尿病による感染症の重症化リスクは一般的に全ての感染症に当てはまります。血糖コントロールが悪ければ悪いほどリスクは高いと考えられているため、糖尿病の治療中断を出来るだけ最小限、理想はゼロとしたいところです。


PAGETOP